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海外テニス

【プロの観戦眼16】新世代の旗手、アルカラスのスーパーフォアハンドと揺るがない自信を見よ~沼尻啓介<SMASH>

赤松恵珠子(スマッシュ編集部)

2022.01.01

走らされた状態でも、腕をムチのように使いストレートアームで打っているアルカラスのフォアハンド。左下は沼尻啓介プロ。写真:真野博正、THE DIGEST写真部

走らされた状態でも、腕をムチのように使いストレートアームで打っているアルカラスのフォアハンド。左下は沼尻啓介プロ。写真:真野博正、THE DIGEST写真部

 このシリーズでは、多くのテニスの試合を見ているプロや解説者に、試合を見る時の着眼点を教えてもらう。第16回は、同期の西岡良仁選手のツアーコーチとしてインディアンウェルズに帯同した沼尻啓介プロ。現地で見た中で、2022年に注目するべき選手を聞くと、18歳のアルカラスだという。

  *  *  *

 現地では若い世代を中心に見て来た沼尻プロは、アルカラスのフォアハンドについて、「ボールの威力が桁違いで、すごすぎます」と驚いた様子で、「さらにパワーテニスになっています」と、垣間見た男子テニス界の未来について教えてくれた。

 どれほどすごいパワーなのか。わかりやすく例えると、試合で時々見かける、相手選手がお手上げと認めるスーパーショットがあるが、アルカラスはそのスーパーショットの連続だと言う。

「テイクバックの時に右手がすごくリラックスしています。打点が身体から離れており、ストレートアームでボールを捉え、腕をムチのように使えています」と、スーパーショットを放てる要因も解説してくれた。
 
 アルカラスはインディアンウェルズの1回戦で元世界1位のアンディ・マリーと対戦した。負けたものの、その試合でも強烈な才能を見せつけている。

「試合序盤、0-3までアルカラスのボールが入りませんでした。入るとエース級のボールを、強打しまくっていたんです。3ゲーム連取されると迷いが生まれるものですが、彼はまったく揺るぎませんでした。自分のテニスを続ければ勝てると思っているんです。打ち続けて、それが少しずつ入り始めて1セットを取りました」

 アルカラスは18歳にして、「試合を通して自分のテニスをやり抜く力」を持っているのだ。テニス界が認める将来のナンバー1候補の、恐るべき実力である。

 しかし、感心ばかりしてはいられない。未来の日本テニス選手は、そういう世界で戦い抜かなければいけないのだ。

 2021年にツアーコーチになることを決意した沼尻プロに、そのパワーテニスにどうすれば対抗できるのか、今の日本ジュニアはどうしていけばいいと考えているかも聞いた。

「パワーで勝てなくても、パワー負けしない工夫、つまりボールの質、深さ、バリエーションなどは必要になります」

 まずは、打ち合える舞台に立てるレベルが要求される。その上で求められるのが「speciality(特徴)」だ。
 
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