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海外テニス

西岡良仁がマイアミ3回戦進出!失意の底から這い上がり“らしさ”を取り戻した戦術家の取り組み<SMASH>

内田暁

2022.03.28

今年の全豪直後は苦悩を口にしていた西岡だったが、兄との取り組みによって本来のクレバーなテニスを取り戻したようだ。(C)Getty Images

今年の全豪直後は苦悩を口にしていた西岡だったが、兄との取り組みによって本来のクレバーなテニスを取り戻したようだ。(C)Getty Images

「僕は、あと2年だと思っています」

 西岡良仁が、自身に課した復調への期限を口にしたのは、全豪オープン1回戦敗戦後のことだった。

 前年の夏以降、勝てない時期が続いていた。ただ、結果以上に心を苛んだのは、「自分のプレー」が見えない苛立ちと不安感。

 その原因には、いくつかの要因があったという。

 一つは、夏に右手首を痛めたこと。サウスポーの彼が、自身のプレーの一つの基軸と頼る、バックの強打が思うように打てずにいた。

 もう一つは、そのケガ再発防止の意味もあり、ストリングを変えたこと。だが大きく打感が変わったことにより、適応に苦しんだ。

「全豪では、飛ぶガット(ストリング)に変えたんです。ただそれだと、僕の持ち味の、ねじ込んで、ねじ込んで、ができなくなり、粘り強さがなくなった。自分のなかで噛み合ってなくて」

 全豪前後の数カ月の葛藤を、西岡がそう打ち明ける。ストリングを変えたことで、ボールは飛ぶようになった。だがその打感が、西岡の最大の持ち味である、精緻に精緻を重ねたボール制御力を損ねたという。
 
 ストリング変更の背景を、より詳細に語ってくれたのは、西岡のコーチで兄の靖雄氏だ。

「良仁はジュニアの頃から15年くらい、ずっとポリツアースピンを使っていました。このガットはやや硬くて、スピンが掛かりやすいんです。そこからボールを良く弾く、ポリツアーストライクに変えたんです」

 変更の背景には、パワーテニスに加速がつく昨今の男子テニスの潮流に、立ち向かう狙いもあった。

 ただ、今季開幕戦のクォン・スンウ戦を見たとき、「あのガットは、良仁のプレーに合ってないかも」と、靖雄氏は直感したという。

 確かに、ボールのスピードは上がった。ただ自身の打球速度が上がれば、当然ながら返球も速くなる。それは、意図的に遅いボールも混ぜ、時間を操るかのような西岡の良さを消していると、コーチの目には映っていた。

 もう一度、ストリングを変えようと兄が提案したのは、全豪後のことだという。

「今が底なら、試せることはすべて試そう。それで勝てなくても、別に今より悪くなる訳じゃないんだし、良くなったら儲けもの」

 そんな言葉を、兄は落ち込む弟にかけた。
 
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