専門5誌オリジナル情報満載のスポーツ総合サイト

  • サッカーダイジェスト
  • WORLD SOCCER DIGEST
  • スマッシュ
  • DUNK SHOT
  • Slugger
海外テニス

「決して忘れることのない一週間」ナダルの献身に、王者の誇りとデビスカップの精神を見た

内田暁

2019.11.26

シングルス、ダブルスと活躍したナダルは、普段はあまり見せない満面の笑みでチームとともに優勝を喜んだ。(C)Getty Images

シングルス、ダブルスと活躍したナダルは、普段はあまり見せない満面の笑みでチームとともに優勝を喜んだ。(C)Getty Images

 英雄の登場に、‶ザ・マジック”を埋め尽くす1万人超えのスペイン・ファンは、高ぶる感情を一斉に解き放った。選手紹介では、「カンピオン(チャンピオン)」のアナウンスに続き、彼が優勝した大会名と年数が、次々と扇状的に読み上げられる。それら栄光のリストに呼応して、客席から「ヘイ!」の合いの手の声がはぜた。
 
 19度のグランドスラム優勝を誇る彼は、今大会、すでに単複併せて7つの勝利をスペインにもたらしている。デビスカップでは、30連勝という驚異の電車道を爆走中でもあった。

 ラファエル・ナダルがシングルス2試合目のコートへと足を踏み入れた時、スペインのファンたちは、母国の優勝を確信しているようだった。

 ナダルの試合の約2時間前、スペインの先鋒を務めるべくコートに立ったのは、ロベルト・バウティスタアグートだった。彼の登場に多くの観客は驚き、同時に、あらん限りの声援をスペインの2番手に送る。彼が3日前に父親を亡くし、一度はチームを去ったことをファンたちは知っている。それでも、前日の準決勝時にはすでにチームに再合流した彼は、決戦の大舞台でシングルス2の大役を担った。
 
 そのバウティスタアグートとネットをはさみ対峙したのは、足首のケガのため、今大会はここまで出場を控えていた19歳のフェリックス・オジェ-アリアシム。今季大躍進を見せた若い力は、アウェーの逆風を打ち破るように、フォアの強打と果敢なネットプレーでバウティスタアグートに襲いかかった。

 だがスペインのベテランは、台風をやり過ごすように19歳の猛攻を耐え、自身のゲームを着実にキープしながら、勝負を仕掛けるべき機を待つ。そうしてもつれ込んだタイブレークで、終盤に集中力を高めてポイントを連ね、第1セットをもぎ取った。

 こうなると、若さは気勢よりも脆さに傾く。フォアのミスとダブルフォールトを重ねるオジェアリアシムを尻目に、バウティスタアグートは淡々とミッションを遂行した。ポーカーフェイスでフィニッシュラインまで走りきった彼は、勝利の瞬間、キャプテンのブルゲラに抱きつき、続いて仲間が待つベンチに身体ごと飛び込んだ。
 

RECOMMENDオススメ情報

MAGAZINE雑誌最新号