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海外テニス

【レジェンドの素顔11】北欧の涼風を感じさせる男、ステファン・エドバーグ│後編

立原修造

2023.01.03

エドバーグは最初スウェーデンでメジャーだったサッカーとアイスホッケーをやっていたが…。(C)Getty Images

エドバーグは最初スウェーデンでメジャーだったサッカーとアイスホッケーをやっていたが…。(C)Getty Images

 大一番におけるスーパースターたちの大胆さや小心をのぞいていくシリーズ「レジェンドの素顔」。前回に続いてテニスの貴公子、ステファン・エドバーグを取り上げよう。

   ◆  ◆  ◆

テニスは自分を表現するものとして申し分なかった

 とにかくこのスウェーデンという国で、圧倒的にメジャーなスポーツといえば、スキー、アイスホッケーとサッカーなのである。これらのスポーツをやらない子どもはまずいない。何よりも親がやらせたがる。それには理由がある。

 スウェーデンという国は高度な福祉国家としてよく知られている。社会保障が万全なのだ。いってみれば、たとえ路頭に迷っても、国家が至れり尽せりで面倒を見てくれる。一見、理想的なように思えるこの制度も、社会の活力という面から見ると問題だ。

 つまり”競争”がないのである。人より出世しようなどとは誰も考えない。へたに出世しようものなら、高収入を根こそぎ税金で持っていかれる。福祉国家と重税は表裏一体なのだ。
 
 そのため、成功した者は皆海外に逃げ出す。ボルグもかつてモンテカルロに逃げ出して随分不評を買った。おまけにデ杯にも出たがらなかったので、本国では散々なことを言われたものだ。

 それはさておき、スウェーデン人が国を逃げ出したくなければ、出世をしないことが一番である。そんな情況で競争心理が芽生えるわけがない。それは子どもたちにも通じてくる。いい会社に入る必要も、いい学校に入る必要もなければ、やる気だって起きてこない。いきおい無気力になりがちだ。

 そのはけ口として、親は子どもにスポーツを勧めるのである。夏はサッカー、冬はスキー、アイスホッケーというのは、平均的子どもたちのパターンである。

 エドバーグもそうだった。彼は最初サッカーとアイスホッケーをやっていた。しかし、どうもチームスポーツにはなじめなかった。色々な理由があっただろう。しかし、結局は、チームメイトの中で自分の存在がどんどん薄くなっていくことに耐えられなくなっていたのだ。
 
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