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【全豪オープン】希望を追い続ける35歳のマリーが4時間49分の死闘を制す!「オフの努力が報われた」<SMASH>

内田暁

2023.01.18

どちらが勝ってもおかしくない大接戦の末に35歳のアンディ・マリー(写真)がイタリアの強豪マテオ・ベレッティーニを振り切った。(C)Getty Images

 それは死闘の幕切れとして、あまりに残酷で、同時に、これ以上にないほど相応しいようでもあった。

 全豪オープンの初戦。アンディ・マリーが、第13シードのマテオ・ベレッティーニから、6-3、6-3、4-6、6-7(7)、7-6(6)で勝利をもぎ取った。

 5時間に迫る死闘にピリオドを打ったのは、リターンショットのコードボール。白帯を叩いたボールが相手コートにポトリと落ちた時、勝者は心苦しそうな表情を浮かべ、ゆっくりとネットに歩み寄った。あるいは、試合後開口一番「疲れた」とこぼしたように、喜ぶだけのエネルギーが、彼の中には残っていなかったのかもしれない。

 だが勝者の姿とは対照的に、ロッドレーバーアリーナに詰めかけた1万人を超えるファンは、熱狂し、「アンディ」の名を連呼した。メルボルンのファンは、5度の全豪準優勝者の"同大会通算50勝目"を見られた幸運に、ただただ酔いしれているようだった。

「これ以上続けられるかわからない。痛みが限界で、靴紐を結ぶことすら困難なんだ……」

 4年前の大会開幕2日前――マリーは会見で、涙ながらにそう語った。長く股関節の痛みに悩まされていた彼は、この時、症状がいかに深刻であるかを明かす。痛みを取り除くには、もはや人工股関節に踏み切るしかない。だが、そのような大手術から復活したトップアスリートの前例は、数えるほどしかなかった。
 
 会見でのマリーの様子を見た人々は、彼の言葉を"引退宣言"と捉える。それは、全豪オープンを主催するオーストラリアテニス協会すら例外ではない。この年の初戦でマリーが敗れた時、アリーナのスクリーンには、トップ選手たちが惜別の言葉を贈る動画が流された。

 ただ当のマリーは、そのビデオを無表情で眺めるだけだった。この時点で彼の心は、現役続行の希望に傾いていたのだろう。全豪が終わって間もなく人工股関節の手術に踏み切ったマリーは、約半年後にはコートに復帰する。

 それから、3年半。あの時の惜別動画で「君が居なくなるのが寂しい」と言ったロジャー・フェデラーや、「指導者になるなら私のコーチの席を開けておくわ」と言ったキャロライン・ウォズニアッキも去ったコートに、マリーは帰ってきた。
 
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