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ルブレフがマスターズ規模拡大問題に見解。一長一短はあるが「大会の間がきつくないぶん回復できる」と好意的<SMASH>

中村光佑

2023.05.17

ルブレフは12日間のマスターズについて、闘争心の持続による「疲労の蓄積」をデメリットに挙げたが、タイトでないぶん「回復できる」のはメリットだと語る。(C)Getty Images

 男子テニスを統括するATP(男子プロテニス協会)は、競技の発展と選手の収入増を目標に掲げる「One Visionプロジェクト」の一環として、2023年から「マドリード・オープン」(クレーコート/ATP1000)と現在開催中の「イタリア国際」(クレーコート/ATP1000)のマスターズ2大会の大会期間およびドロー数を、従来の8日間・56ドローから12日間・96ドローに拡大している。

 これには選手からも賛否両論が巻き起こっているが、「マスターズの規模拡大にはいい点と悪い点がある」と自身の考えを明かしたのが、トップ10選手のアンドレイ・ルブレフ(ロシア/世界ランク6位)だ。

 今週のイタリア国際で4回戦敗退に終わったルブレフは、3回戦後に応じた米テニス専門チャンネル『Tennis Channel』のインタビューでマスターズの新フォーマットに言及。

 自身がマスターズ初優勝を飾った4月初旬のモンテカルロ・オープンと、準優勝した翌週のスルプスカ・オープン(ATP250)が非常にタイトなスケジュールだったことを踏まえ、春の米国シリーズ(インディアンウェルズとマイアミ)と同様にクレーシーズンのマスターズでも1日ごとに休みが設けられる約2週間の日程が採用されたことは、多少なりともいい方向に働いていると語った。

「複雑な話だね。(僕の場合は)モンテカルロOPとスルプスカOPを2週続けてノンストップで戦った後、(マドリードが始まるまで)リラックスして休養し、回復する時間が増えたから少し楽になった。マドリードでは同じようにノンストップでプレーしたけど、少なくとも1日は休みがあったから、少し楽だった」
 
 その一方でルブレフは選手が直面している最大の課題が「精神的に長く闘争心を維持し続ける」ことにあり、「それ(闘争心の維持)をしようとして疲労が蓄積する可能性がある」とコメント。マスターズの規模拡大はデメリットにもなり得るとの見解を示した。

 とはいえルブレフ自身はどちらかと言えばマスターズの新フォーマットを好意的に捉えている。ベスト16で終わったマドリードが閉幕してからローマが開幕するまでの間にも数日間のインターバルがあったことで、気持ちをしっかりと切り替えることができたと話した。

「マドリードではベスト8に行く前に負けてしまったから、少し休むことができたし、ここ(ローマ)に来てからまた少しフレッシュになれたよ。もちろん故郷(ロシア)に帰ることはできないから、少し大変なこともある。1週間ごとに移動しなければならない。1週間練習して、その練習が精神的にきついものであったとしても、大会の間がキツキツじゃないぶん回復できる。通常はスケジュールがタイトな場合は、大会期間中にあまり練習しなくても疲れはたまってしまうものだ」

 ATPの公式カレンダーを見ると、マドリードとローマに加え、今年10月に行なわれる「上海マスターズ」でも新たに12日間・96ドローが導入されることになっている。また海外メディア『UBITENNIS』によれば、25年シーズンからは「カナダ・マスターズ」と「シンシナティ・マスターズ」(アメリカ)でも同じ形で規模が拡大される見込みだという。

文●中村光佑

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