男子第91回・女子第67回を迎えた「2023年度 全日本学生テニス選手権大会」（インカレ）が８月14日から三重県・四日市テニスセンターで開催され、大会最終日の21日に各種目の決勝が行なわれた。男子シングルスは第１シードの藤原智也（慶應義塾大学４年）と第11シードの林航平（慶大４年）という慶大の主将VS副将対決となり、藤原が６－３、６－１で快勝して２年ぶり２度目の優勝を飾った。

　昨年決勝で敗れた際、藤原は「もっと自分からプレッシャーをかけるテニスをしなければいけない」と反省を口にしていた。そして今大会、藤原はその言葉を見事に実践してみせた。「決勝はそこまでではないですけど」と謙遜したが、「大会を通じて自分から打っていって、去年よりは楽に勝ち進んでいけた」と振り返る。

　決勝だけ勝手が違ったのは、相手が慶應の同期で、手の内を知り尽くした林だったからかもしれない。実力で勝る藤原は、それをそのまま発揮することで確実にポイントを取ることができた。普段通りしっかりラリーを作り、打てるボールは逃さず叩き、ネットにも積極的に出ていく。

　第２ゲームでサービスブレークに成功した藤原は「序盤で引き離せて、向こうの心が折れたような気がした。僕は打つボールやポジションでプレッシャーをかけ、自分の存在を大きく見せることができた」と、気心の知れた仲だからこその駆け引きで優位を築いていく。
  　逆に林は「自分が通用していない感じがした。ラリーすればするほど相手に上回られて、藤原の質の高いテニスに対して自分がミスをしていた」と振り返る。前日までダブルスでも勝ち残っていた林に疲労がたまっていたのも事実だ。

　第１セットこそ１ブレーク差の６－３と競り合ったが、第２セットに入ると林の足が止まり、藤原が一気に加速。６－１の大差で藤原が２度目の頂点に立った。

　４年生の２人にとって、今大会への思い入れは特に強いものがあった。藤原は卒業後、一般企業に就職するため、大学で競技人生を終える。

「最後のインカレで優勝でき、素直にうれしい。１年生の時は手術をしてまともにテニスができず、でも残りの３年全てで決勝に進めて、２回優勝できた。テニスを通じて人間として成長できたと思う」