海外テニス

王者ナダルと互角の勝負を演じた24歳、西岡良仁が得た世界トップの「イメージ」と全豪の焦点

内田暁

2020.01.19

全豪オープン前のヨネックスのパーティーでATPカップのナダル戦について詳しく話してくれた西岡良仁。写真:山崎賢人(THE DIGEST写真部)

「自分で考えることがすごく大事。練習も、どうしたら球が入るのか、どのコースに打つのがいいかというのを、自分でイメージしながらすること」 
 
 この言葉は約1年前、西岡良仁が地元で開催したテニスクリニックで、小学生たちに伝えていた"西岡流テニス上達法"だ。それは「究極の負けず嫌い」を自認する彼が、幼少期から多くの試合をこなすなかで、勝つために培ってきた「考え方の癖」でもある。

 1年3か月前にツアー優勝を果たし、世界のトップレベルで戦う今もなお、この「考え方の癖」は、彼の強さの根幹を成している。

 全仏オープンでのホアン・マルティン・デルポトロとの死闘に、尊敬する錦織圭からの勝利――。多くの経験を得た昨シーズンの最後に、西岡が戦った相手は、ノバク・ジョコビッチだった。スコアは、1-6、2-6。本人曰く「こてんぱんにやられた」試合ではあったが、西岡がこの試合から持ち帰った最大の収穫は、世界最強選手の「イメージ」である。
 
「ジョコビッチ選手とやったイメージを持ったまま、日本で2~3週間の練習ができたわけじゃないですか。シーズンの最後があの試合だったのはメチャメチャラッキーだし、メチャメチャ良かったんです。抽象的なイメージですが、それでも大きかった」
 
 昨年末のオフシーズン中、西岡は「ジョコビッチ選手が相手だったら、こんなに浅いボールは叩かれる」、「彼だったら、もっと速いタイミングでボールが返ってくる」と、自身により高いハードルを課して、コートを駆けボールを打った。たとえ日本で練習していようとも、彼がネットの向こうに見ていたのは、あの時に戦ったジョコビッチの姿だ。

 そのイメージこそが、新シーズンで最高のスタートが切れた要因だと、西岡は明言する。日本のエースとして出場した今季開幕戦のATPカップでは、初戦で世界45位のパブロ・クエバスを6-0、6-1で圧倒。2試合目でも、ニコロズ・バシラシビリから6-2、6-3の完勝を手にした。