若き王者ヤニック・シナー(イタリア/世界ランキング1位/23歳)のドーピング問題の決着に関して、ノバク・ジョコビッチ(セルビア)やプロテニス選手協会(PTPA)などから強い批判が出るなか、シナーの弁護団と世界反ドーピング機構(WADA)が反論している。
まず経緯をおさらいしておこう。
昨年3月にシナーが薬物検査で陽性反応を示した問題は、不正監視機関の国際テニス・インテグリティ・エージェンシー(ITIA)がシナーに過失や怠慢がなかったことを認め、いったんは決着。しかし同10月、これを不服としたWADAが、スポーツ仲裁裁判所(CAS)に上訴し、当初はシナーへ最長2年の出場停止処分を求めていた。
この最終審理が4月に行なわれる予定だったが、2月15日にWADAとシナー側との合意が成立。シナーには3カ月間(2025年2月9日~5月4日)の出場停止処分が下されることが決まった。
しかし、処分が明けるのは、次の四大大会「全仏オープン」はもちろん、母国開催の前哨戦「イタリア国際」にも間に合うタイミング。さらに、これまでの故意でないドーピング違反選手たちへの厳しい処分との格差から批判が巻き起こっていた。
これに反論しているのが、シナーの弁護士ジェイミー・シンガー氏だ。『スカイニュース』のインタビューで、「えこひいき」などなかったと訴えている。
「選手たちは、他の選手が関与している時は常にタカ派で、自分が関与している時は常にハト派になります。これはとても不公平。彼(シナー)は最初から規則に従って手続きを進めてきました。えこひいきなどありません。たまたま今回の状況が非常に異例だっただけです」
「ではなぜ彼は、3カ月後に受け入れたのか? CASに訴えるのではなくWADAの申し出を受け入れるのが正しいことだと彼を説得するのに少し時間がかかったのです」
一方、WADAの弁護士であるロス・ベンツェル氏は、『BBCスポーツ』の取材に応え、WADAが追加で行なった調査を踏まえ制裁3カ月の妥当性を主張した。
「私たちが受け取った科学的フィードバックは、マイクロドーズを含む意図的なドーピング事件ではないというものでした。これはドーピングとはかけ離れた事件です」
また、制裁処分はトーナメントの日程を考慮したものではないか? という指摘も真っ向から否定している。
「いったん合意に達したら、『ああ、でもこれは2カ月後から3カ月間適用する』などと言うことはできません。合意が成立したら直ちに実行され公表されることが、透明性のために重要です。先週の金曜日に決定され、深夜でしたがすぐに発効した。それがこのタイミングになった理由です」
「私たち(WADA)が課す制裁は、規約に記載されているとおり日程は考慮されません。今後行なわれるイベントが重要かどうかを考慮して、制裁を調整したり変更したりすべきではありません」
シナーおよび合意に至ったWADAの主張と、批判の声は平行線を辿っているように見える。ドーピングコントロールのあり方は今後も議論を呼ぶだろう。
構成●スマッシュ編集部
【画像】世界ランキング1位のシナーがズベレフをストレートで破り大会2連覇を達成!|全豪オープン2025男子シングルス決勝
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まず経緯をおさらいしておこう。
昨年3月にシナーが薬物検査で陽性反応を示した問題は、不正監視機関の国際テニス・インテグリティ・エージェンシー(ITIA)がシナーに過失や怠慢がなかったことを認め、いったんは決着。しかし同10月、これを不服としたWADAが、スポーツ仲裁裁判所(CAS)に上訴し、当初はシナーへ最長2年の出場停止処分を求めていた。
この最終審理が4月に行なわれる予定だったが、2月15日にWADAとシナー側との合意が成立。シナーには3カ月間(2025年2月9日~5月4日)の出場停止処分が下されることが決まった。
しかし、処分が明けるのは、次の四大大会「全仏オープン」はもちろん、母国開催の前哨戦「イタリア国際」にも間に合うタイミング。さらに、これまでの故意でないドーピング違反選手たちへの厳しい処分との格差から批判が巻き起こっていた。
これに反論しているのが、シナーの弁護士ジェイミー・シンガー氏だ。『スカイニュース』のインタビューで、「えこひいき」などなかったと訴えている。
「選手たちは、他の選手が関与している時は常にタカ派で、自分が関与している時は常にハト派になります。これはとても不公平。彼(シナー)は最初から規則に従って手続きを進めてきました。えこひいきなどありません。たまたま今回の状況が非常に異例だっただけです」
「ではなぜ彼は、3カ月後に受け入れたのか? CASに訴えるのではなくWADAの申し出を受け入れるのが正しいことだと彼を説得するのに少し時間がかかったのです」
一方、WADAの弁護士であるロス・ベンツェル氏は、『BBCスポーツ』の取材に応え、WADAが追加で行なった調査を踏まえ制裁3カ月の妥当性を主張した。
「私たちが受け取った科学的フィードバックは、マイクロドーズを含む意図的なドーピング事件ではないというものでした。これはドーピングとはかけ離れた事件です」
また、制裁処分はトーナメントの日程を考慮したものではないか? という指摘も真っ向から否定している。
「いったん合意に達したら、『ああ、でもこれは2カ月後から3カ月間適用する』などと言うことはできません。合意が成立したら直ちに実行され公表されることが、透明性のために重要です。先週の金曜日に決定され、深夜でしたがすぐに発効した。それがこのタイミングになった理由です」
「私たち(WADA)が課す制裁は、規約に記載されているとおり日程は考慮されません。今後行なわれるイベントが重要かどうかを考慮して、制裁を調整したり変更したりすべきではありません」
シナーおよび合意に至ったWADAの主張と、批判の声は平行線を辿っているように見える。ドーピングコントロールのあり方は今後も議論を呼ぶだろう。
構成●スマッシュ編集部
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