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海外テニス

「テニス史上最高の一戦」で人々の記憶に刻まれた男、ベルダスコが明かした“ラストダンスの舞台裏” <SMASH>

内田暁

2025.02.27

2009年の全豪OP準決勝で“ファイティングポーズ”を見せるベルダスコ。ナダルとの壮絶な激闘は世界中のテニスファンの記憶に残った。(C)Getty Images

2009年の全豪OP準決勝で“ファイティングポーズ”を見せるベルダスコ。ナダルとの壮絶な激闘は世界中のテニスファンの記憶に残った。(C)Getty Images

 シングルス最高位世界7位、ダブルスは8位。獲得したツアータイトルも、シングルスが7で、ダブルスは8つ。

 ただ、それらの記録以上に恐らくは、記憶に残るテニス選手だろう。

 フェルナンド・ベルダスコ。ラファエル・ナダルらと共にスペインの一時代を築いた41歳が、居を構えるドーハ開催の「カタール・エクソンモービル・オープン」(ATP500)を最後に、25年のキャリアに幕を引いた。主催者推薦枠での、ダブルスでの出場。しかもパートナーは、ノバク・ジョコビッチ(セルビア)だった。

 2023年9月のチャレンジャーを最後に公式戦を離れていたベルダスコに、「引退試合をするなら、付き合うよ」と誘いの声を掛けたのは、ジョコビッチの方だったという。

「去年末にノバクから『引退試合はしたの?』と聞かれたので、していないと言ったら、『だったら、やろうよ。ラストダンスを踊ったら?』と彼が言う。しかも『その気になったら、いつでも僕に声を掛けて』と言ってくれたんだ」

 カタールオープン初戦で、カレン・ハチャノフ/アレクサンダー・バブリク(ロシア/カザフスタン)組に6-1、6-1で快勝した後、ベルダスコが明かした。最後の大会は、この地で家族と共に暮らすベルダスコの希望でカタールオープンに決まる。ただ先の全豪オープンでジョコビッチが足を負傷したため、ベルダスコは欠場も提案したが、ジョコビッチは「問題ない」と即答。かくして、ラストダンスの舞台は整った。
 
 ベルダスコが、自身のソーシャルメディアで「カタールを最後に引退する」と表明した数日後。大会開催を控えた会場で練習をするベルダスコのコートサイドに、友人や、彼を見つけたファンたちが集まってきた。

 中にはこれが最後と知り、中国から駆け付けたという長年のファンも。

「あれ、ベルダスコだよね?」と驚くテニスファンの男性は、「今でも全豪オープンのナダル戦は、よく覚えているよ」と言って、腕を前方に伸ばし手の平を突き出すポーズを取った。

 ファン氏の言う「全豪のナダル戦」とは、2009年大会の準決勝。

 日を跨ぎ、ファイナルセットにもつれ、3連続マッチポイントのうち2本を豪快なスイングボレーで凌いだベルダスコは、最後、自らのダブルフォールトで5時間14分の死闘にピリオドを打った。

 前述したファンの男性が見せた手の平をかざす所作は、この大会でベルダスコがたびたび見せた“ファイティングポーズ”。この試合は、“全豪オープン最長記録”として歴史に刻まれる。ただ記録以上に、いかなる局面でも攻め続ける勇猛な姿と、ダブルフォールトの後に崩れるようにヒザと両手をコートにつけた哀愁の背は、人々の記憶に刻まれた。
 
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