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海外テニス

出場停止明けを間近に控えた世界王者シナーが心境を明かす「今やりたいのはテニスをプレーして心穏やかでいること」<SMASH>

中村光佑

2025.04.06

ドーピング問題によって3カ月間の出場停止処分を受けていたシナーが、5月からの戦線復帰を控え現在の複雑な思いを口にした。(C)Getty Images

ドーピング問題によって3カ月間の出場停止処分を受けていたシナーが、5月からの戦線復帰を控え現在の複雑な思いを口にした。(C)Getty Images

 昨年3月に端を発するドーピング問題で、世界アンチドーピング機構(WADA)との合意により3カ月間(2025年2月9日~5月4日/練習は4月13日から再開)の出場停止処分を科せられていた男子テニス世界ランク1位のヤニック・シナー(イタリア/23歳)。処分を受けて以来、初めてのインタビューとなった母国メディア『Sky Sports Italy』の取材で現在の心境を語っている。

 既報の通りシナーは昨年3月の検査で、禁止薬物「クロステボル」(筋肉増強作用のある合成ステロイド)が2度検出。シナー側は禁止薬物が体内に入ってしまった理由について、サポートメンバーの1人が自身の傷を治療するためにクロステボル入りのスプレーを肌に塗り、その手でシナーにマッサージ等を施したためだと説明していた。

 不正監視機関の国際テニス・インテグリティ・エージェンシー(ITIA)はシナーに過失や怠慢がなかったことを認め、いったんは決着。しかし同10月、これを不服としたWADAが、スポーツ仲裁裁判所(CAS)に上訴し、当初はシナーへ最長2年の出場停止処分を求めていた。

 この最終審理は今年4月に行なわれる予定だったが、一足早く2月15日にWADAとシナー側との合意が成立。冒頭の通りシナーには3カ月の出場停止処分が科された。

 昨年はツアー8勝を挙げ、今季も1月の全豪オープンで四大大会3勝目を飾って好スタートを切っていたシナー。実戦復帰を約1か月後に控える23歳の若き王者は今何を思うのか、ついに沈黙を破った。

 WADAとの合意を「最もダメージが少ない道だった」と表現する一方、自身に下された処分を受け入れるまでには時間がかかったという。それでも「結局はよりましな道を選ばなければならない」という考えに至ったことで気持ちを落ち着かせ、周囲の人々にも大いに支えられたと明かした。
 
「時にはとても不公平に思えることもあるが、別の視点から見ればもっとひどい結果かつもっと不公平なことになっていたかもしれない。それが現実だ。3カ月の処分を受け入れるという決定はかなり早く下された。完全には納得していなかったが、我々はそれをすぐに受け入れた」

「僕が感情や思いがない人間だと言ったら嘘になる。人生というのは学ぶものだ。毎年、自分自身について、そして自分の価値について学んでいる。簡単ではなかったし、とてもつらいこともあったけど、周りの人たちが自分に何が起こったのか理解する力を与えてくれた」

 復帰戦が母国開催のマスターズ1000大会「イタリア国際」(5月7日~18日/イタリア・ローマ/クレーコート)になることから「特別扱い」との声が上がっているシナーだが、本人は意に介さない。

「他の選手たちに温かく迎え入れられるかはわからない。でも、自分が何をしたかはわかっているし、自分は無実だということもわかっている。(心は)落ち着いているよ。今僕がやりたいのはテニスをプレーして、心穏やかでいること。それが全てだ。うまくいくと信じているよ。最初は時間がかかるかもしれないけどね」

 最後には再び男子ツアーを支配したいと野望も明かしたシナー。復帰後はどんなプレーを見せるのか、注目が集まる。

文●中村光佑

【画像】連覇達成のシナーのほか、全豪オープン2025で熱戦を繰り広げた男子選手たち

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