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【テニスルール虎の巻】ボールを打つ時に大きな声を出す行為は「プレーの妨害」に該当するのか<SMASH>

スマッシュ編集部

2025.05.17

かつて「妖精」として親しまれたマリア・シャラポワも、打球時に発する大きな声が問題視されたことがあった。果たしてこうした「声」はルール的にはどうなるのか。(C)Getty Images

 多くのアマチュアは自分自身でゲームの判定を下す「セルフジャッジ」でテニスの試合をしています。「自分で判定するなら簡単だ」と思うかもしれませんが、それは大間違い。いい加減な判定によってトラブルを起こすことが多々あるからです。

 そうしたトラブルなしで試合を楽しむには、とにかくルールに詳しくなることが大切です。そこでテニス四大大会の出場経験を持つ元プロ選手で現在公認審判員も務める岡川恵美子氏にケース別でルールについて解説してもらいました。

 今回は試合中に発せられる「声」についてです。

 ボールを打つ時に大きな声を出してプレーする人がいます。こうした行為は「プレーの妨害」に該当しないのでしょうか?

   ◆    ◆    ◆

 かつて「テニス界の妖精」として親しまれたマリア・シャラポワさんも打球時に発する大声を問題視されました。ですが彼女の打つ時の声というのは呼吸音で、吐く息が声のように出てしまうのです。だからプレー中は常に出るため、その人のプレースタイルと受け入れるほかありません。

 ただ、相手にしっかりと聞き取れるような「エイッ!」や「それッ!」といった掛け声は、意識的に出しているもので、「アウト」に聞き間違えられてしまうこともあります。マナーとしても慎むべきでしょう。
 
 とはいえ、こうした自発的な声であっても「プレーの妨害」に該当するかは微妙です。というのも相手が声を出すタイミングが「自分がボールを打つタイミング」ではないからです。

 プレーの妨害というのは、自分が今まさにボールを打とうとしている時に相手が大声を発するようなケースです。なので、相手がボールを打つ時に声を出すのであれば、プレーの妨害と言い切れないのがルール上の解釈となります。

 しかしながら、セルフジャッジの試合で相手の声が大きくて気になる時は、ロービングアンパイア((セルフジャッジの試合会場を巡回している審判またはレフェリー)を呼んで様子を見てもらうのも一つの方法です。

 明らかに声が大きすぎる場合は声掛け(注意ではなく)してもらうわけです。ただ、このようなケースでも「大きな声により隣のコートでプレーしている人たちにも影響が出ていますよ」というのが前提になるでしょう。

解説●岡川恵美子
17歳で全日本選手権を制覇して日本初の高校生プロとなる。グランドスラム(四大大会)では、全豪オープン3回戦進出をはじめ、全仏オープンやウインブルドンの本戦に出場。現在はベテラン大会に挑戦しながら、ITF公認審判員、JTA公認審判員も務める。日本テニス協会理事。

構成●スマッシュ編集部
※スマッシュ2022年9号より抜粋・再編集

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