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海外テニス

「平等は不可能でも、ならすことはできるのでは」ケガで初戦途中棄権の西岡良仁が訴える、テニス界の構造改革【全仏OP】<SMASH>

内田暁

2025.05.28

ポピリンとの全仏OP初戦でケガにより途中棄権した西岡。男子テニスのパワー化への対応策や、日本人選手が抱える地理的な不利について語った(※写真は今月初旬のイタリア国際)。(C)Getty Images

ポピリンとの全仏OP初戦でケガにより途中棄権した西岡。男子テニスのパワー化への対応策や、日本人選手が抱える地理的な不利について語った(※写真は今月初旬のイタリア国際)。(C)Getty Images

 第1セットを5-7で落とした後、フィジオを呼び、腰付近の治療を受けた。

 第2セットの終盤では、ストレッチを繰り返し、痛みのためか顔をしかめた。そして第3セットの第4ゲームで、ネット際に歩み対戦相手との握手を求める。西岡良仁の全仏オープンは、1回戦の途中棄権という結果に終わった。

 今季の西岡は肩の痛みに苦しめられ、1月末の国別対抗戦“デビスカップ”以降は、棄権や欠場が続いていた。クレーシーズンも出場したのは、ローマ・マスターズのみ。それも出場規約があるため、無理を押して出たような状態だ。

 ただ肩のケガは徐々に癒え、今大会前の練習でも、さほど痛みを気にせず打てるまでに回復していたという。惜しむらくは、その直近の練習で腰に痛みが出てしまったこと。今回の棄権の理由も、そこだった。

 170㎝の小さな身体で、大型化およびパワー化が加速する昨今の男子テニスで戦い続ければ、いたる所に軋みが出るのは必然であり、不可避だろう。今回の全仏開幕前の会見では、つい数年前まで新勢力の旗手と謳われたステファノス・チチパスすら、「カルロス・アルカラスとヤニック・シナーの出現以降、男子テニスは大きく変わった。現状を維持するのが、はるかに困難になった」と明言したほどだ。
 
 勢いを増すその激流の中、西岡は失敗を恐れず、あらゆる面で挑戦と調整を重ねている。

「ラケットを、0.25インチ(6.35mm)だけ長くしてみた」のも、その一つ。「(ディエゴ・)シュワルツマンなど背の低い選手はロングのラケットを使っていた。トライしてみて、なかなか感覚としては良かった」と言う。

 プレー面では、反応速度を早めるためリターンの構えを変え、パワーをいなすべくスライスも増やすようにしているという。ただ異なる身体の動きは、ケガを誘発する要因にもなるだろう。「肩が痛くなったのも、高いボールをスライスで打つ練習をしていたことがあると思う」と、以前に西岡は語っていた。

 “ツアー”というテニスのシステムにおいても、日本を拠点とする選手は地理的不利を被る。グローバル化がさらに進んだとはいえ、テニスツアーの主戦場は依然として欧米。移動にかける労力や時間は自ずと大きくなる。

 そのような日本人選手が置かれた状況について、西岡は「もちろん不利だと思います」とした上で、こう続けた。

「地理的な問題もそうですし、僕個人でいえばやっぱりこの体格なので、ここみたいな跳ねるコートだと、なおのこと負荷が大きくなる。僕も30歳近くになってきたので、年齢もあるかなと。昔みたいに、長く試合をすれば勝てる展開では、もうなくなってきています」
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