現在開催中のテニス四大大会「ウインブルドン」の男子シングルスでまさかの初戦敗退を喫し、その後の記者会見で長らく抱えている精神的苦悩を赤裸々に告白した世界ランキング３位のアレクサンダー・ズベレフ（ドイツ／28歳）。今大会で男女を通じて史上最多の四大大会25勝目を狙う元世界王者のノバク・ジョコビッチ（セルビア／現６位）も自身の過去の経験からその苦しみが理解できると同情を寄せている。

　ロジャー・フェデラー（スイス／元１位）に次ぐ史上２人目のウインブルドン通算100勝を達成し、５年連続17度目のベスト16進出を果たしたジョコビッチはダニエル・エバンズ（イギリス／元21位／現154位）との２回戦終了後の会見で「大きな孤独感を感じている」と明かしたズベレフに親身に寄り添うように、こうコメントしたという。

「サーシャ（ズベレフの愛称）とはとても良い関係を築いているし、彼のことは人としてとても好きなんだ。実は彼とはテニスだけではなく、人生の様々な話題についてよく話をするほどだ。

　ウインブルドン開幕前の練習後にも、テニスの技術的なことについて話す機会があった。彼が質問してきて、僕がそれに答える形でね。彼はいつでも僕に相談していいとわかっているとは思う。彼が今まさに経験していることは、僕自身も何度も経験してきたことだからよくわかるよ。プレーしていても喜びや楽しさを感じられなかったり、自分の求める結果が出せなかったりすることはあるからね」
  「いつも最高の状態でいられるわけではない。今年の彼は特に試合数が多く、スケジュールも過密なはずだ。多くの大会に出続けて疲れてしまっているのかもしれないし、気分転換や休息が必要なのかもしれない。そのことは彼自身と彼の家族が一番よくわかっているだろうけど、僕は彼に共感できる。

　メンタルヘルスの問題はテニス界ではあまり語られてこなかったテーマだが、もっと注目されるべきだと思うし、勇気を持って苦しみを告白する選手たちには敬意を表したい。彼の幸運を心から願っているし、もし彼が助けを必要とするなら、僕はいつでも力になるよ」

　また、海外メディア『Blick』によれば今大会の女子シングルスで16強入りした元世界４位のベリンダ・ベンチッチ（スイス／現35位）も幼少期から何度も一緒に練習をし、「良き友人」でもあるというズベレフを支えたいと語ったという。

「彼の話に耳を傾け、支えになりたいと思う。ツアーにいるほとんどの選手がその気持ちを理解できるだろうし、彼の言葉に共感し、“自分自身も同じような経験をしたことがある”と思った選手も多いはず。私自身は彼の現状を聞いてつらい気持ちになった。彼が自分自身を取り戻し、今必要としているサポートを受けられるよう願っている」

　親しいツアー仲間たちの支えは、今のズベレフにとって何よりの励みとなるはずだ。ツアーを回る目まぐるしい日々は続くが、彼が少しずつでも心の安らぎを取り戻していけることを願うばかりである。

文●中村光佑

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