■「目指す舞台を実際に見ること」はなぜ重要なのか
では、なぜ「目指す舞台を実際に見ること」が、ブレークスルーにとって重要なのでしょうか。その理由の一つとして、試合観戦を通して「自分がその場で戦っている感覚」を得られることが挙げられます。私たちの脳には、「ミラーニューロン」と呼ばれる神経細胞があり、目の前で誰かがプレーする様子を見るとき、自分自身が同じ動きをしているかのように脳が反応します。すなわち、私たちは単に試合を観ているのではなく、無意識のうちに自分がその場でプレーしているような感覚を味わっているのです。
このように、脳内では目指す舞台を「疑似体験」している一方で、現実にはまだその舞台に立てていないというギャップが生じます。このギャップを強く意識することが、「自分もこの舞台で戦いたい!」というモチベーションの獲得に繋がっていきます。実際にある選手は、「絶対に出場したかったのに出られなかった大会を見に行ったら、自分がこの舞台に立てていないことをリアルに痛感した。そこから自分もこの舞台でプレーをしたかったという気持ちが増して、より一層努力できるようになった」と話しています。このような体験は、ある種の「痛み」を伴いますが、それこそが選手を突き動かす原動力となり得るのです。
■「目指す舞台を実際に見ること」を実践する際のポイント
ここからは、「目指す舞台を実際に見ること」を実践する際のポイントを記していきます。それぞれの状況に合わせて、参考となる箇所を取り入れてみてください。
① まずは試合会場に残ってみることから
最も簡単に実践できるのは、自分が敗退した後にも会場に残り、その後のラウンドの試合を観戦することです。そうすると、一段上のラウンドではどのようなレベルの試合が繰り広げられているのかを、間近で観察することができます。
また、テニスの大会は県大会、地域大会、全国大会などの階層構造になっているため、自分が出場している大会よりも上位のグレードの大会に足を運んでみると良いでしょう。上位大会になるほど、映像配信を通して試合を観戦できる機会が増えますが、選手のボールの弾道の変化やポイント間の振る舞いなどは、現地に足を運ぶからこそ、詳細に観察することができます。さらに、上位大会の会場に漂う独特な「空気」も、会場に行くからこそ体感できるものです。
こうした実践をコーチや保護者がサポートすることも効果的です。例えば、ジュニアや学生のチームのコーチは、希望者を募り、上位大会の観戦ツアーを組むことができるかもしれません。
② 目的を持って能動的に試合を観る
会場では、いくつかの試合を観戦したり、特定の試合をじっくり観戦するなど、様々な観戦スタイルが考えられます。しかし、ただ試合をぼんやりと眺めるのではなく、目的を持って試合を観ることが大切になります。
例えば、トップレベルの選手がどのようなプレーをしているのかを学びたい場合は、上位シードの選手たちの試合を優先的に観戦すると良いでしょう。一方、日頃ともに練習している選手、予選大会で対戦した選手、自分とプレースタイルが近い選手といった、自分にとって身近な選手の試合を観戦することもおすすめです。なぜなら、こうした選手の試合はより一層自分事として観戦しやすくなり、先述した「疑似体験」の度合いを高めてくれる可能性があるためです。
【やってみよう!今日からできる実践へのヒント】
以下のポイントを意識して、「目指す舞台を実際に見ること」を実践してみましょう!
①敗退後に行なわれる試合や上位大会など、上のグレードの試合を観戦する機会をつくる
②ただ試合を眺めるのではなく、目的を持って特定の試合を観戦する
解説=日置和暉
2000年生まれ。慶應義塾体育会庭球部を経て、慶應義塾大学大学院に進学。慶應義塾大学総合政策学部非常勤講師。プリンス契約コーチ。2023年、日本テニス学会研究奨励賞受賞。
解説=發田志音
2000年生まれ。慶應義塾体育会矢上部硬式庭球部を経て、東京大学大学院に進学。2018年、日本テニス学会研究奨励賞受賞。
構成●スマッシュ編集部
※スマッシュ2024年5号より抜粋・再編集
【画像】なかなか見られないトッププロの練習やテニス教室の様子
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では、なぜ「目指す舞台を実際に見ること」が、ブレークスルーにとって重要なのでしょうか。その理由の一つとして、試合観戦を通して「自分がその場で戦っている感覚」を得られることが挙げられます。私たちの脳には、「ミラーニューロン」と呼ばれる神経細胞があり、目の前で誰かがプレーする様子を見るとき、自分自身が同じ動きをしているかのように脳が反応します。すなわち、私たちは単に試合を観ているのではなく、無意識のうちに自分がその場でプレーしているような感覚を味わっているのです。
このように、脳内では目指す舞台を「疑似体験」している一方で、現実にはまだその舞台に立てていないというギャップが生じます。このギャップを強く意識することが、「自分もこの舞台で戦いたい!」というモチベーションの獲得に繋がっていきます。実際にある選手は、「絶対に出場したかったのに出られなかった大会を見に行ったら、自分がこの舞台に立てていないことをリアルに痛感した。そこから自分もこの舞台でプレーをしたかったという気持ちが増して、より一層努力できるようになった」と話しています。このような体験は、ある種の「痛み」を伴いますが、それこそが選手を突き動かす原動力となり得るのです。
■「目指す舞台を実際に見ること」を実践する際のポイント
ここからは、「目指す舞台を実際に見ること」を実践する際のポイントを記していきます。それぞれの状況に合わせて、参考となる箇所を取り入れてみてください。
① まずは試合会場に残ってみることから
最も簡単に実践できるのは、自分が敗退した後にも会場に残り、その後のラウンドの試合を観戦することです。そうすると、一段上のラウンドではどのようなレベルの試合が繰り広げられているのかを、間近で観察することができます。
また、テニスの大会は県大会、地域大会、全国大会などの階層構造になっているため、自分が出場している大会よりも上位のグレードの大会に足を運んでみると良いでしょう。上位大会になるほど、映像配信を通して試合を観戦できる機会が増えますが、選手のボールの弾道の変化やポイント間の振る舞いなどは、現地に足を運ぶからこそ、詳細に観察することができます。さらに、上位大会の会場に漂う独特な「空気」も、会場に行くからこそ体感できるものです。
こうした実践をコーチや保護者がサポートすることも効果的です。例えば、ジュニアや学生のチームのコーチは、希望者を募り、上位大会の観戦ツアーを組むことができるかもしれません。
② 目的を持って能動的に試合を観る
会場では、いくつかの試合を観戦したり、特定の試合をじっくり観戦するなど、様々な観戦スタイルが考えられます。しかし、ただ試合をぼんやりと眺めるのではなく、目的を持って試合を観ることが大切になります。
例えば、トップレベルの選手がどのようなプレーをしているのかを学びたい場合は、上位シードの選手たちの試合を優先的に観戦すると良いでしょう。一方、日頃ともに練習している選手、予選大会で対戦した選手、自分とプレースタイルが近い選手といった、自分にとって身近な選手の試合を観戦することもおすすめです。なぜなら、こうした選手の試合はより一層自分事として観戦しやすくなり、先述した「疑似体験」の度合いを高めてくれる可能性があるためです。
【やってみよう!今日からできる実践へのヒント】
以下のポイントを意識して、「目指す舞台を実際に見ること」を実践してみましょう!
①敗退後に行なわれる試合や上位大会など、上のグレードの試合を観戦する機会をつくる
②ただ試合を眺めるのではなく、目的を持って特定の試合を観戦する
解説=日置和暉
2000年生まれ。慶應義塾体育会庭球部を経て、慶應義塾大学大学院に進学。慶應義塾大学総合政策学部非常勤講師。プリンス契約コーチ。2023年、日本テニス学会研究奨励賞受賞。
解説=發田志音
2000年生まれ。慶應義塾体育会矢上部硬式庭球部を経て、東京大学大学院に進学。2018年、日本テニス学会研究奨励賞受賞。
構成●スマッシュ編集部
※スマッシュ2024年5号より抜粋・再編集
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