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海外テニス

「獲得ポイントの消滅」や「帰国できない辛さ」アジア拠点の女子テニス選手を悩ませる欧米勢との埋めがたい格差<SMASH>

内田暁

2021.09.25

コロナ禍で帰国するリスクを考えた土居は「旅」を生活の基盤に選んだが、欧米の選手に比べて心身への負担は大きい。(C)Getty Images

コロナ禍で帰国するリスクを考えた土居は「旅」を生活の基盤に選んだが、欧米の選手に比べて心身への負担は大きい。(C)Getty Images

 大会が欧米に集中する現状では、アジア地域を拠点とする選手たちの負担は大きい。

 土居美咲は、今年1月に日本からオーストラリアに発って以降、オリンピックのため帰国した時以外は、“旅”を生活の基盤としている。彼女の場合は、北米と欧州の複数都市に拠点や知己を持つ、オーストリア系アメリカ人コーチの人脈がものを言った。

 春から夏にかけての約3か月、単身で欧州転戦した加藤未唯は、その経験を「もうやめておこうと思います」と振り返る。とりわけ苦労したのは、練習パートナーの確保。選手個々が最高の準備をしたいと望むツアーでは、お互いのスケジュールや練習内容をすり合わせるのも難しい。“バブル(隔離措置)”で外出もままならないなか、大会が終われば一旦帰宅する欧州勢の姿を見ては、日本から遠征する身のつらさを実感した。

 遠征による心身の疲労を覚えているのは、オーストラリアのアシュリー・バーティも同様だ。オーストラリアへの入国者に課される2週間の完全隔離は、世界1位のアスリートといえど例外ではない。そのためバーティは今年3月に遠征に出て以来、一度も帰宅できずにいるという。
 
 加えて今年は、年間ランキング上位8名で競われる「WTAファイナルズ」が、11月にメキシコで開催されることになった。既に出場権を獲得しているバーティだが、帰国後の2週間隔離の影響を考慮し、欠場すると見られている。

 バーティのコーチは、「彼女は心身ともに疲れ切っていて、休みが必要だ」と語り、10月のパリバ・オープン欠場も示唆。来年1月の全豪オープンに備えるためにも、オフシーズンの重要性を説いた。

 テニスの大会は毎週のように開催され、ファンもコートサイドに足を運び、外形的には、ツアーは元の姿を取り戻したようにも見える。

 ただその構成要素は、決して以前と同じではない。
 
取材・文●内田暁

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