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海外テニス

44年の空白に終止符を打ったバーティー。異変を感じた天才はプランBを実行し憧れの恩師と共に表彰台へ<SMASH>

内田暁

2022.01.31

44年ぶりのオーストラリア人選手による全豪オープン優勝を果たし、珍しく感情を爆発させたバーティー。(C)Getty Images

44年ぶりのオーストラリア人選手による全豪オープン優勝を果たし、珍しく感情を爆発させたバーティー。(C)Getty Images

 後にバーティーは、「今日はストロークの感覚が良くなかった」と認めている。だが「天才」と称された彼女には、“プランB”を選択する冷静さとスキルがあった。

「足を使い、フォアを多く使おうと思った。ミスすることは気にせず、攻撃的に行くことを考えた」。はたして試合展開は、劇的にまで反転する。

 バックサイドのボールに回り込み、逆クロスとストレートに自在に打ち分けるバーティーの前に、コリンズは劣勢に回った。

 突破口を見つけ、軽快さを増すフットワーク。走り出したストローク。1ポイントごとに沸きあがる、割れんばかりの大歓声――。この時に生まれた潮流を、止める術を持つ者はいなかっただろう。

 タイブレークでのバーティーは、彼女がなぜ世界1位か、そして44年という歴史の溝を埋めるにふさわしい選手かを証明する。ドロップショットで相手を誘い出し、中ロブで再び後方へ揺さぶり、それでも追いすがるコリンズが必死に返したロブを、下がりながら豪快にスマッシュで叩き込む。ボールと戯れるような彼女の魅力が、凝縮されたシーンだった。

 44年の空白に終止符を打ったのは、この日を象徴するかのような、鮮やかなフォアのパッシングショット。
 
 刹那、いつもは勝利の瞬間も穏やかなバーティーが、吠えた。ネット際の握手を終えると、ラケットをベンチへと軽く放り、身体の内の感情を全て吐き出すかのように、二度、三度と両手を振り下ろし、身体を折り曲げて叫んだ。

「私にしては、ちょっと珍しいことだよね」。後にバーティーは、少し照れ臭そうに栄光の瞬間を振り返った。

 決勝の熱が冷めやらぬセンターコートで、行なわれた表彰式。オーストラリアを象徴する青い照明が照らすステージ上で、司会をつとめるトッド・ウッドブリッジが、うやうやしく言った。

「実はトロフィープレゼンテーターとして、サプライズを用意しました。全豪オープン4度の優勝を誇る、イボンヌ・グーラゴング・コーリーです!」

 驚きの喚声に沸く、スタジアム。もっとも、幼少期から憧れた “恩師”の登場に誰より驚いたのは、外ならぬ優勝者だったろう。

 声を上げ、目を輝かせ、口角を上げて顔中に幸福感をみなぎらせる――。その無垢な笑みは、19年前の写真の中の少女、そのままだった。

現地取材・文●内田暁

【連続写真】内側にしぼる動きでパワーアップする、バーティーのバックハンドスライス
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