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海外テニス

ダニエル太郎、世界12位に惜敗するも自信を得た2週間。「パリまでにメダルが取れる選手に」と視線は五輪に向く<SMASH>

内田暁

2023.03.13

ダニエル(左)はノーリー(右)を崖っぷちまで追い詰める。相手の異なる球質に手を焼き逆転されたが、一方でダニエル自身もハイレベルなプレーを引き出せた。(C)Getty Images

ダニエル(左)はノーリー(右)を崖っぷちまで追い詰める。相手の異なる球質に手を焼き逆転されたが、一方でダニエル自身もハイレベルなプレーを引き出せた。(C)Getty Images

 一方で、そのようなノーリーの実直なテニスが、ダニエルの集中力を高め、現状での最高レベルのプレーを引き出した側面もあるだろう。

 ノーリーの二色のショットに対応すべく、ダニエルは一打ごとにポジションを変え、相手のショットを見極め、堅実かつ恐れることなく相手の堅守を崩しにかかった。機を見て放たれるドロップショットにも鋭い出足で追いつき、逆に相手を押し込んでから柔らかなボールをネット際に沈めもした。

 全てのボールを全力で追い、誰もが決まったと思うボールを打ち返し、時に鮮やかなパッシングショットを決めて拳を振り上げる。気持ちの入ったダニエルのその姿に、ほぼ満席の観客も立ち上がり、歓声と拍手を送り続けた。

「僕とは直接関わりのない人とも、つながれたと感じた。僕もパワーをもらったし、見た人にも何かを残せたんじゃないかと思う。良い結果も出せたし、すごく充実した大会でした」

 試合後のダニエルは、敗戦の悔しさ以上に、ある種の達成感を言葉と表情ににじませた。
 
 2月末のアカプルコ大会(ATP500)からの2週間で、ダニエルは10試合戦い、4位のキャスパー・ルードを筆頭に3人のトップ50選手から勝利を得た。その自信を胸に、今のダニエルが目標とするのは、2024年夏のパリオリンピックだという。

 それも、単に出場を目指すのではない。

「オリンピックは4年に一度なので、長期的な良い目標になる。パリまでにメダルが取れる選手になりたい。まだ遠い道のりだけれど、可能だと信じています」。

 今大会が始まった時、ダニエルは「以前の僕は幸せになることが目標だったけれど、今は強い人間になること。それが成長したところかな」と、照れた笑みで明かしてくれた。

 彼が求める強さとは何か――? 見た人々の胸にその一端を残した、今大会の活躍だった。

現地取材・文●内田暁

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