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国内テニス

奈良くるみ、現役引退後1年で全日本ジュニアTDに就任!「子どもたちに次へ進むための何かを得て欲しい」と意欲<SMASH>

内田暁

2023.08.19

自らホワイトボードに情報を書き込むなど多忙を極める奈良には「世界基準の大会に近づけたい」という強い思いがある。写真提供:JTAメディアプロモーション部

自らホワイトボードに情報を書き込むなど多忙を極める奈良には「世界基準の大会に近づけたい」という強い思いがある。写真提供:JTAメディアプロモーション部

 日本のジュニアに交じっても小柄な155センチの身体で、奈良は世界の最前線で戦い続け、ツアー優勝もなし遂げた。その彼女が、新トーナメントディレクターとして志すのは、全日本ジュニアを「世界基準の大会に近づけること」だ。

 日本のジュニア大会には、数々の“ローカルルール”が存在する。それらの中で必然性が感じられないものや、世界基準から乖離したものにはメスを入れていく。

 とりわけ、奈良が下した大きな変革への決断が、「試合前のウォームアップ」である。

 多くの年代の選手が一堂に会するこの大会では、オンコートでの練習時間の確保が難しい。過去には本戦会場での練習はできず、選手たちは各自で近隣のコート等を手配していた。

 有明に会場を移した今大会では、この慣例を改革すべきだとの声が、関係者の間であがったという。とはいえ、コート不足は如何ともしがたい。そこで当初は、「3試合目までに入った選手は朝会場で練習し、それ以降の選手たちはエクストラウォームアップにする」という折衷案が提案された。 “エクストラウォームアップ”とは、試合開始前のウォームアップを、本来の5分から10分に拡張する苦肉の策である。

 だが奈良は、「それは違う」と却下した。

「これから世界で戦っていこうとしている子たちが集う全国大会の場で、エクストラウォームアップで試合に入るのはおかしいと思って。そこは、私のわがままを通させてもらいました」

 このトーナメントディレクターの鶴の一声により、今大会では選手全員が、試合当日に会場で20分間の練習ができるようになった。
 
 さらに奈良は、ウォームアップの内容にも言及する。

「試合前の5分間練習も、地域によってサーブから入るというローカルルールもあるそうなんです。それも国際試合では無いことなので、なくしていきたいと思っています。強制はできないんですが、『練習はラリーから入りましょう』ということを推奨していきたいなと」

 果たして今大会では、選手たちの目につくところにホワイトボードを置き、奈良自らが選手たちへの通達事項を手書きで記している。

 そこには、ウォームアップの「おすすめの時間配分」として、次のように書かれていた。

「ストローク(1分半)→ボレー&ストローク(1分半)→サービス(2分)」と。

 これらのフォーマットの変更と並び、奈良が強化したのが「暑熱対策」だという。

「この暑さだと、やはりアイスバスが絶対に要ると思ったんです」という奈良の提案により、ナショナルチームの協力のもと、会場の更衣室にアイスバスが設置された。ただ、まだ身体的に未成熟な子どもが全身を冷やすことの危険性も考慮し、今回は脚を冷やすという手法を取る。まだ手探り段階ではあるが、大きな一歩を踏み出したことは間違いない。
 
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