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海外テニス

日米における“コーチ観の違い”とは? ツアーコーチ西岡靖雄が痛感「ジャパンオリジナルを模索する必要がある」<SMASH>

内田暁

2025.05.16

マイアミ・オープン会場で練習する靖雄氏(左)と良仁(右)。写真提供:西岡靖雄

マイアミ・オープン会場で練習する靖雄氏(左)と良仁(右)。写真提供:西岡靖雄

 また技術面の指導法でも、日米での違いを感じたという。

「受講したのがジュニア育成コーチ向けというのもあったかもしれませんが、アメリカの方が細かい。テイクバックはこれくらいとか、球出しのやり方にしてもロジカルに教わりました。テクニックをしっかりと言語化して教えてくれる人が、アメリカでは求められているのかなと思います。

 あと感じたのは、どうやったら子どもたちが飽きずに、テニスを続けられるかという考えが強いこと。例えば、カードゲームの要素などを取り入れて、まずは楽しませる。これもやはり、レッスンを継続してもらうことがクラブ経営の持続にもつながるという、ビジネス的側面も強いのかなと思います。こういう手法を日本のテニスクラブに持っていったら、できることの幅も広がるのではと思いました」

 それら“コーチ観”の違いに加え、久々に世界のトップの集う場に身を置き痛感したのは、男子テニスの変化...もっと言うなら、進化だったという。

「単純に言って、ボールのスピードがめちゃめちゃ速くなりました。以前よりも打球の軌道が直線的で低い。でもフラットではなく、しっかりとスピン回転もかかっている。展開も早くなっていて、チャンスが来たら一球も逃さずに攻める。昨年ジャパンオープンで優勝した(アルテュール・)フィスの練習も近くで見ましたが、ボールも展開も、さらに速くなっていると感じました」
 
 かくも明確なテニス界の変化は、弟から兄への要求にも、顕著に反映されたという。

「今回、良仁との練習で以前のように球出しをしたら、『そんなボールでは意味ない』と言われたんです。試合で、そんなボールは来ないから。そこで自分的には速くしたつもりでも、『まだ遅い!』と言われました」

「だから僕、球出しのグリップが変わりましたもん」――そう苦笑いしつつ、表情と声のトーンを引き締め、こうも続ける。

「僕が良仁に付いていたのが、たかだか3年前の話。その3年間に、こうも世界のテニスは変わったのかと驚きました。最近はハードコートも、以前より速くバウンドが低いと聞きます。

 良仁はそれらの変化に対応するため、リターンの構えも変えた。大切なのはサーブやリターンからの3球目で、ラリーも短くなっていると思います。最近好調のジャック・ドレイパーの練習を見て驚いたのが、振り回しの練習をしないんですね。5球くらいラリーをすると、止める。つまりそれまでに決めるという認識で、これは画期的でした」

 日米どちらが正しいとか、誰のやっている練習が正解というのではない。ただ状況は刻一刻と変化し、それに伴い求められる指導や、正しさの定義も変わっていくということだろう。

「指導者にとって大切なのは、情報を集め、常にアップデートしていくこと。それを日本にいる人たちが、どうやっていくかが課題だと思います。ドレイパーの練習にしても、これを日本人が真似するのも違うだろうし。ジャパンオリジナルな方法を模索していく必要があると思います」

 テニス界奔流の変化を感得し、指導法や価値観の多様性に触れ、自分の中の固定観念の殻を破る。靖雄氏いわく、「そこを感じられたのが、今回、マイアミに来てすごく良かったこと」だった。

文●内田暁

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