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国内テニス

フェデラーやチャンと『名勝負』を繰り広げた鈴木貴男のテニスキャリアを、担当編集者が振り返る<SMASH>

保坂明美(THE DIGEST編集部)

2021.05.08

大勢の仲間に見守られ現役最後の試合を戦った鈴木貴男は、持ち味のサーブ&ボレーも披露した。写真:JPTT(長浜功明)

大勢の仲間に見守られ現役最後の試合を戦った鈴木貴男は、持ち味のサーブ&ボレーも披露した。写真:JPTT(長浜功明)

「選手としての生活に区切りをつけようと思います」

 そう明かされたのは2019年の秋だった。「セレモニーとかしたくないですよ、だって泣いちゃうもん」と、軽口ではぐらかしたが、区切りをつけてもなお、テニス界の1人でありたいという思いの現れであり、しんみりとコートを去るのは性に合わないとのことからだった。

 どこかで最後の試合はしたいと思いつつも、コロナ禍で2020年は叶わず、今年4月に開催された高校、大学、実業団、プロ選手らが団体戦を行なう『JPTT盛田正明杯』で、チームRECの一員として戦うシングルスが、その舞台となった。

「コロナもあったので、やれなくてもしょうがないというのはありました。でも思った以上に良い舞台を作って下さって、YouTubeなどを通して多くの方が注目してくれたし、当時ツアーやデ杯で一緒に戦ってきた元選手たちや現役選手もそれぞれの立場で僕の試合を見てくれた」

 増田健太郎、本村剛一、石井弥起ら同世代の元選手たちは参加チームの監督やコーチとして、松井俊英、添田豪、伊藤竜馬らは現役選手としてラストマッチを見守った。ジュニア時代からの盟友、岩渕には、自ら見にきてほしいと連絡をしたという。
 
 20歳の年下の中川直樹と戦った約30分は、持ち味であるサーブ&ボレー、片手バックのパッシングショットと、毎ポイントを楽しんだ。マッチポイントはセンターへ放った鈴木のサービスを、中川が回り込みフォアのリターンエースで貫き試合終了。会場は万雷の拍手に包まれた。

「頑張っていきましょう」

 大会終了後に行なわれたセレモニーで選手たちを前に鈴木は同じ言葉を2度使った。引退したら「頑張ってください」ではないのかという問いをあえて投げかけると、こう答えた。

「僕からしてみたら、どうか過去の人にしないで下さいという思いです(笑)。一緒にテニスの話もしたいし、練習だってしたい。僕だから伝えられること、感じ取ってもらえることはこの先もあると思うので」

 選手としての活動を終えた鈴木は、すでにツアーコーチとして新しい道を切り拓いている。ピストレッジコーチから学んだことを、これからは自ら後進に伝える番だ。

文●保坂明美(THE DIGEST編集部)

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