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マラソン・駅伝

“中長距離の新エース”田中希実が目指すものとは?飛躍の2020年から五輪を展望する

寺田辰朗

2021.01.23

5000mで東京五輪代表に内定している、田中希実。(C)Getty Images

5000mで東京五輪代表に内定している、田中希実。(C)Getty Images

●種目の壁を作らない選手

 昨シーズンの田中希実(のぞみ。豊田自動織機TC)は種目の壁をなくすことで、タイムを大きく引き上げることに成功した。7月に3000mで8分41秒35、8月には1500mで4分05秒27と2種目で日本記録を更新。分離開催にはなったが、日本選手権は1500m(10月)と5000m(12月)の2冠を達成した。この2種目の同一年度優勝は1997年の市川良子(JAL・AC)以来23年ぶりの快挙で、五輪参加標準記録を突破していた5000mは東京五輪代表に内定している。

 しかし、いともたやすく多種目を走れたわけではない。12月の日本選手権後には「5000mの距離への不安が結構ありました」とコメントしている。1500mと3000mの日本新はどちらも、前半から先頭に立って自分のペースで走り切った。それに対し日本選手権5000mは、廣中璃梨佳(JP日本郵政グループ)の後ろに付く展開になり、最後の周回でなんとか先行できた。フィニッシュ直後は「意識が朦朧とした」ほどだ。

「1500m、3000mまでは1人でも行けるというか、逆に人がいない方が走れるんです。5000mは少し別ものですね。中だるみが出てくるので、いかに中だるみをなくすかが課題ですが、今の私にはきつく感じられる部分です」
 
 日本選手権では廣中が前を走ったことに助けられたところもあったが、田中は残り3000m、8分50秒で、廣中の3000mの自己記録(8分52秒80)を上回るほど好調だった。田中が勝つことができたのは、3000mと1500mの力が20年シーズンで大幅にアップしていたからだろう。3000mの記録(8分41秒35=日本記録)で廣中を上回り、1500mの日本記録を目指す練習によって5000mにもつながる“スピード持久力”を研いていた。

 田中と廣中の後半のスピードに対応できたのは、3000m・5000mの日本記録を出していた頃の福士加代子(ワコール)しかいないように思う。
 

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