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ゴルフ場でサッカーボールを蹴る新競技!フットゴルフ日本代表・小林隼人の大きな夢

手嶋真彦

2021.01.25

ゴルフ場でサッカーボールを蹴る新しいスポーツ。栃木県にあるこのセブンハンドレッドクラブが、21年W杯の開催コースだ。(C)hayato.k.footgolf

ゴルフ場でサッカーボールを蹴る新しいスポーツ。栃木県にあるこのセブンハンドレッドクラブが、21年W杯の開催コースだ。(C)hayato.k.footgolf

 ゴルフ場でサッカーボールを蹴り、スコアを競う新しいスポーツ――。フットゴルフの日本代表、小林隼人は21年秋に日本で開催されるW杯に向けての準備を進めながら、競技の裾野拡大や、生涯スポーツとしての未来といった夢を思い描く。

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 人生初のフットゴルフは面白く、それ以上に難しかった。幼稚園児の頃から始めたサッカーの技術は活かせても、ボールをどの程度の強さで蹴れば止めたい場所に止まるのか、距離感がさっぱり掴めなかったのだ。

 フットゴルフ日本代表の小林隼人は2015年の夏に、30代半ばという年齢でこのスポーツと出会った。日本フットゴルフ協会によると、09年にオランダでルール化され、12年に国際連盟が設立、そして14年2月に日本協会が創設されたばかりの新しいスポーツだ。

 社会人サッカーを32歳で退いた小林が、35歳で始め、41歳となった現在も日本代表として戦えている通り、フットゴルフは生涯スポーツとしての大きな可能性を秘めている。サッカー経験を活かし、仕事とフットゴルフを両立させながら、世界の舞台に挑むという小林のチャレンジは、夢に満ちあふれている。

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 知人の誘いでフットゴルフを始めることになった小林は、いきなり公式戦に出場する。フットゴルフはゴルフ場でラウンドするスポーツだ。小さいゴルフボールの替わりにサッカーボールを使い、その分、ボールを蹴り入れるカップは大きくなる。ゴルフ用のグリーンを傷つけるわけにはいかないので、ラフと呼ばれる芝生の深いエリアにフットゴルフ専用のグリーンを作らなければならない。フットゴルフ専用のカップが常設されたゴルフ場は日本にも増えてきているが、15年はプレーできる場所がより限られていたため、小林は練習ゼロのまま、ぶっつけ本番で最初の試合に臨んだのだった。

 ゴルフクラブをスイングするゴルファーとは違って、フットゴルファーは自分の足でボールを蹴ってカップに近づけていく。クラブで打つほど飛距離は出ないので、各ホールの距離はゴルフの半分程度に収まるように設計されている。ゴルフと同じく、フットゴルフでもホールごとにパーが定められており、アンダーパーをもっとも伸ばした選手が勝者となる。
 
 15年7月に小林が臨んだ初陣は、本人の楽観を裏切る惨敗だった。首位の選手に20打ほどの差をつけられ、出場した約60人の下位に沈んだ。上位陣が50~60ヤード先のグリーンに1打で乗せていたのに対し、小林のキックは明らかに短いか、完全に行き過ぎるかで、ほぼ1ホールごとに1打差をつけられた。ちなみに1ヤードは91・44cmであり、1m弱である。

 すでにフットゴルフの第2回ワールドカップは、16年1月にアルゼンチンで開催されることが決まっていた。その大会に派遣する日本代表を決めるための最終選考会に出場するために、小林は自主練を開始する。平日は仕事を終えた夜、土日も自宅から通える芝生のある公園で、キックの距離感を掴む練習を重ねた。

 最終選考会の出場権を獲得するには、月1回のペースで開催される所定の大会で一度は5位以内に入らなければならない。チャンスは8月、9月、10月と3度残っており、小林は9月の大会で3位に入った。11月の最終選考会には20人が出場し、16人が日本代表に選ばれる。落選するのは4人だけだ。

 この最終選考会を、小林はフットゴルフを始める前から意識していた。下調べをしていて、日本代表がオランダに遠征する様子をネットで見ていたからだ。小林は思っていた。
〈日本代表選手に、俺もなりたい〉

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 それから5年後の20年秋に、小林はこう振り返る。フットゴルフをずっと続けてきたのは、15年11月のあのワールドカップ日本代表最終選考会で味わった悔しさが原動力になっていたと。小林は落選だった。わずか4人の1人に入ってしまった。

 フットゴルフとの向き合い方は、そこから変わった。仕事以外の限られた時間を有効に使って、まずは勝利を収めるためにフットゴルファーとしての実力を上げていく。小林は本気になったのだ。
 

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