ラグビー

【ラグビーW杯をヒット記事で振り返る!】「審判の25分間」を乗り越えてスコットランドにリベンジ達成。日本代表はどこまで歴史を塗り替えれば気が済むのか

吉田治良

2019.11.11

「個人的にボコりたいと思っている」と語ったリーチは、並々ならぬ闘志でスコットランドをなぎ倒した。写真:茂木あきら(THE DIGEST写真部)

 歴史の扉とは、これほどまでに重いものだったのか。そう思い知らされるような「試練の25分間」だった。

 この国に、ラグビー強国を名乗る資格が本当にあるのか。そう問い続けられているような「審判の25分間」だった。

「5、4、3、2、1……ウォォォーー!!」

 2019年10月13日、横浜国際総合競技場。およそ6万7000人の祈るようなカウントダウンが終わると同時に、タイムアップを報せる銅鑼の音が鳴り響く。そして、途中出場のFB山中亮平が左足でボールをタッチに蹴り出した瞬間、悲鳴のような歓声とともに、重い歴史の扉は開いた。

 28-21──。スコットランドの終盤の猛攻を受け止め、跳ね返し続けたジャパンが、ついにワールドカップで史上初のベスト8進出を決めたのだ。

「僕らの決勝戦」

 SO田村優がそう位置付けて臨んだプールA最終戦は、4年前のリベンジマッチでもあった。前回のワールドカップで日本が唯一の敗北を喫し、結果的に悲願の決勝トーナメント進出を阻んだスコットランドとの再戦。引き分け、あるいは負けても条件次第では突破が決まるとはいえ、なんとしてでも倒したい、倒さなくてはならない因縁の相手だった。
 
「個人的にボコりたいと思っている」

 ゲームキャプテンに復帰したFLリーチ・マイケルの並々ならぬ気合いに導かれるように、立ち上がりから日本のリズムがいい。SH流大の速いテンポの球出しから連続攻撃を仕掛けて、スコットランドを揺さぶっていく。

 しかし先手を取ったのは、勝たなくては2011年大会以来二度目のプール戦敗退が決まるスコットランドだった。6分、SOフィン・ラッセルのクロスキックで日本陣内深くまで一気に攻め込むと、そこからフェイズを重ね、最後はSHグレイグ・レイドロー→ラッセルとつないでインゴールに飛び込んだのだ。

 それでも、ジャパンに動揺はない。開幕のロシア戦は4分、続くアイルランド戦も13分と早い時間帯に先制トライを許したが、そこから見事に逆転してみせた。数々の成功体験が、日本をすっかり骨太にしていた。前半に奪った3つのトライは、いずれも今大会のハイライトフィルムに収められるほどスーパーだったが、同時にそれは、彼らのメンタルタフネスを証明するようなトライでもあっただろう。

 16分に田村のPGが失敗に終わっても、まるで意に介さない。そのわずか1分後だった。CTBラファエレ・ティモシーの飛ばしパスを受けたWTB福岡堅樹が左サイドを突破。今大会初先発の快足ランナーが片足を掴まれながら繰り出したオフロードパスを、「インサイドサポートが大事になると、1週間を通して言われ続けた」というWTB松島幸太朗が内側でキャッチし、抜群の加速でトライラインを駆け抜けた。