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ゴルフ

稲見萌寧が銀メダルを手にできた要因。プレッシャーをモノともしない俊英の次なる目標は?

山西英希

2021.08.19

日本史上初の快挙を成し遂げた稲見。奥嶋コーチの支えは大きかった。(C)Getty Images

日本史上初の快挙を成し遂げた稲見。奥嶋コーチの支えは大きかった。(C)Getty Images

 東京五輪では金メダルこそ逃したものの、メジャー2勝を含む米ツアー16勝を挙げているリディア・コとのプレーオフを制し、銀メダルを獲得した稲見萌寧。日本ゴルフ史上初のメダリストとなった快挙は、ゴルフ界を大いに盛り上げた。

 稲見と言えば、これまで海外メジャーに出場したのは昨年の『AIG女子オープン』(予選落ち)と『全米女子オープン』(54位タイ)の2試合のみで、世界のトップクラスと優勝を争ったことは皆無だった。しかも、今年に入って5勝を挙げているとはいえ、6月第2週の『宮里藍サントリーレディス』以来優勝争いに絡んでおらず、今年前半の勢いを感じさせるほどのコンディションではなかった。

 にもかかわらず、最終日の17番ホールを終えた時点で世界ランキング1位に君臨するネリー・コルダを捉え、首位タイに躍り出るほどの活躍を見せたのだから、あらためてその集中力とポテンシャルの高さに驚かされる。その上で稲見が銀メダルを獲得できたポイントを探ってみよう。

 まず挙げられるのが、持ち味であるショットの正確性を発揮できたことだろう。4日間のフェアウェイキープ率は85・7%で1位。パーオン率は76・3%で8位と高い数字をマークした。さらに勝負どころで次々とパットを沈めたことが、スコアを伸ばした要因となった。
 
 また、最終日は最終組の1つ前で回ったことで、自分のゴルフに集中できたことも大きい。逆に首位のコルダは同組のコを終盤はかなり意識していたように感じた。いい意味でコがプレッシャーをかけたことで、コルダが思うようにスコアを伸ばせなかったとも言える。

 さらに、世界ランキングの2~4位、6位の選手をそろえた韓国勢が決勝ラウンドに入って爆発的な追い上げを見せなかったことも大きい。

 しかし、最大の要因はキャディに奥嶋誠章コーチを起用したことではないか。これまでも何度か稲見のバッグを担いでいる奥嶋コーチだが、印象的だったのは昨年の『スタンレーレディス』だ。この試合で稲見は最終日に67をマークしてプレーオフに持ち込むと、1ホール目にバーディを奪い、シーズン初勝利を飾った。

 実はこの週はショットの調子が悪く、イメージ通りのボールを打てていなかったという。目の前にあるボールに集中するように心がけながらショットが好転するのを待っていた。「とにかく我慢、我慢とラウンド中は言い続けていました」と稲見の集中力が持続するように心がけた。その時と同様に五輪でも稲見と奥嶋コーチが会話する場面は多く見られたが、コースマネジメントやクラブ選択だけではなく、ミスをしたときのフォローもしっかりしているように感じた。試合自体も苦しい展開が続いただけに、今回も“我慢”という言葉を多用したのではないか。
 

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