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大物スプリンターの誕生か?ピクシーナイトのG1初勝利に「3歳馬で横綱相撲」と福永騎手も驚き

三好達彦

2021.10.04

圧倒的な力を見せたピクシーナイト。2馬身差をつけて完勝した。写真:産経新聞社

 10月4日、第55回スプリンターズステークス(GⅠ、芝1200m)が中山競馬場で行なわれ、単勝3番人気のピクシーナイト(牡3歳/栗東・音無秀孝厩舎)が、2番人気のレシステンシア(牝4歳/栗東・松下武士厩舎)に2馬身差をつけて完勝。念願のGⅠタイトルを手にした。3歳馬の本レース制覇は、2007年のアストンマーチャン(牝)以来、14年ぶりのこととなった。

 3着には10番人気のシヴァージ(牡6歳/栗東・野中賢二厩舎)が食い込み、一方、1番人気に推された高松宮記念(GⅠ、中京・芝1200m)の覇者であるダノンスマッシュ(牡6歳/栗東・安田隆行厩舎)は終いの伸びを欠いて6着に敗れた。

 大物スプリンターの誕生か? そう感じさせるほど、ピクシーナイトの勝ちっぷりは完璧なものだった。それは手綱をとった福永祐一騎手も同様だったようで、「(3歳秋の時点で)こんな横綱相撲を取れるとは、こちらの想像を超えていた」とコメントするほどだった。

 ピクシーナイトはスタートをきっちり決めると、逃げ馬2頭を前に見るインの好位置をキープ。鞍上の意図どおりにスムーズなレース運びで直線へ向くと、一気にスパート。素晴らしい末脚の切れを発揮して先頭に立ち、熾烈な2着争いを尻目に、楽な手応えのままゴールを駆け抜けた。古馬牡馬と比べて斤量で2kgのアドバンテージはあるものの、その数字を差し引いても余りある能力の高さを見せつける勝利だったと言えよう。
 
 ピクシーナイトは、天皇賞・秋や香港カップなどGⅠレースで6勝を挙げたモーリスの初年度産駒。今回の勝利はモーリス産駒として初のGⅠ制覇となり、父の今後の活躍に勢いをつけることになった。

 音無秀孝調教師によると、今後は「オーナーと相談して」との注釈付きながら、香港スプリント(GⅠ、シャティン・芝1200m)に登録・出走する方針だという。

 層が厚いことで知られる香港の短距離界だが、そのなかで香港スプリントを勝った(2012-2013と2連覇)のは、アーモンドアイなどを出してチャンピオンザイヤーの座を占めるロードカナロアと、昨年のダノンスマッシュの2頭のみ。ロードカナロアが勝ったのは4、5歳時のことなので、もしピクシーナイトが制することがあれば、日本生産調教馬として未踏の偉業となる。

 ちなみに父のモーリスは、香港GⅠ(香港マイル、チャンピオンズマイル、香港カップ)で3戦3勝という完璧な実績を残しているだけに、期待は否が応でも高まろうというものだ。

 気になるのはダノンスマッシュの敗因だが、鞍上の川田将雅騎手は、折り合いはついていたものの、動きたいところで動けなかった、としている。馬体は素晴らしく見え、また休養明けでもしっかりと実績を残してきた馬だが、今回は休養としては最長となる約半年のブランクが影響したのかもしれない。

 また驚かされたのは、本レースのプレビューで"最大の穴馬"としてピックアップしたシヴァージの3着好走だ。本来は末脚の切れが持ち味の本馬だが、初騎乗となる吉田隼人騎手は"イン有利"の馬場状態を活かすため、1番枠から先行させる大胆な作戦を決行。ピクシーナイトには離されたものの、レシステンシアとはアタマ差まで迫ったのは立派のひと言。吉田騎手の騎乗の素晴らしさはもちろん、その策に応えたシヴァージの力も再評価したい。

文●三好達彦

【関連動画】「こちらの想像を超えていた」と騎手も驚愕!ピクシーナイトが完勝したスプリンターズSのレース映像
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