2021年の明治大学ラグビー部にとって二つの大きな変化があった。一つ目は3期にわたりチームを率い、2018年には大学選手権優勝へと導いた田中澄憲監督が退任し、リコー・ブラックラムズの監督を務めた神鳥裕之氏による新体制が敷かれたこと。二つ目は世田谷区八幡山に構える同大のグラウンドが11年ぶりに全面リニューアルされたことだ。
朝7時、新しい人工芝に姿を見せたラグビー部は、伝統校らしく的確な役割分担と秩序の中で練習を始める。練習時間は8時半までの短期集中。メニューはいたってシンプルで、そのほとんどの時間が「走り」に費やされる。
キャプテンの飯沼蓮は、「こういったメニューを手を抜かずにやり続けることを一番大切にしてきています」と言う。部員数が100名近い規模だからこそ、一人ひとりの心がけ次第で練習の質が変わってくる。
「今年のチームは例年に比べるとスター選手が多くいるわけではなく、それはチーム全員も理解しています。だからこそ春から重視してきたことはフィットネスの強化です。走る量もそうですが、その中での精度も大事にしています。スキル練習にいくまでジョグしたり、膝に手をつかずに態度で示したり、走る時にラインを踏まないなど、細かいことですが、チーム全員がそれを強みにするという意識を持ってやっています」と、基本的な部分に手を抜かないことをチーム全体のレベルアップへとつなげている。
リコー・ブラックラムズの監督を経験した神鳥氏は、「優勝争いを何十年と続けられるチーム作り」を目標としている。写真/徳原隆元
6月1日より就任した神鳥監督も、新体制を作るにあたり、個々の成長やコミュニケーション能力の向上を重視している。社会人チームでの指導経験が8年あるものの、大学、しかも全国優勝が最大の目標となるチームを率いるにあたっては、自らの変化も必要だった。
「学生と社会人の違いはあり、ここは自分にとって新しい経験です。“指導する”という感覚は学生の方が大きく、感情的に指導したり、諭したりすることが圧倒的に多くなりました。その中で相手の考えを引き出すようにしています。どう思うのか、何を考えているのか対話をしながら、一方的ではない形をとっています」
ただ勝てばいいわけではない。これまでの“選手主体”のチーム作りを継承しつつ、応援し、期待してくれている方に対する対応であったり、トレーニングに対する姿勢といったところでも尊敬され、かつ、勝ち続ける集団となっていくことが、目指すところだ。
故・北島忠治監督の最後の優勝である1996年度から、田中澄憲監督による2018年度の優勝まで実に22年、栄冠から遠ざかった明治大の歴史を「つらい時代」と神鳥監督は振り返る。
「伝統の一戦である早明戦で60点近くの点差をつけられ敗退したことや、明治の試合からお客さんが遠ざかる時もありました。そういう時期を乗り越えて今があります。大学選手権での目標は優勝しかありません。やるからには一番を目指します。ただ、優勝は結果であって、誰もコントロールできるものではありません。国内トップレベルのチームを指導してきた経験を生かしつつ、優勝争いを何十年と続けられるチームを作っていくことが、私のやるべきことだと思っています」
朝7時、新しい人工芝に姿を見せたラグビー部は、伝統校らしく的確な役割分担と秩序の中で練習を始める。練習時間は8時半までの短期集中。メニューはいたってシンプルで、そのほとんどの時間が「走り」に費やされる。
キャプテンの飯沼蓮は、「こういったメニューを手を抜かずにやり続けることを一番大切にしてきています」と言う。部員数が100名近い規模だからこそ、一人ひとりの心がけ次第で練習の質が変わってくる。
「今年のチームは例年に比べるとスター選手が多くいるわけではなく、それはチーム全員も理解しています。だからこそ春から重視してきたことはフィットネスの強化です。走る量もそうですが、その中での精度も大事にしています。スキル練習にいくまでジョグしたり、膝に手をつかずに態度で示したり、走る時にラインを踏まないなど、細かいことですが、チーム全員がそれを強みにするという意識を持ってやっています」と、基本的な部分に手を抜かないことをチーム全体のレベルアップへとつなげている。
リコー・ブラックラムズの監督を経験した神鳥氏は、「優勝争いを何十年と続けられるチーム作り」を目標としている。写真/徳原隆元
6月1日より就任した神鳥監督も、新体制を作るにあたり、個々の成長やコミュニケーション能力の向上を重視している。社会人チームでの指導経験が8年あるものの、大学、しかも全国優勝が最大の目標となるチームを率いるにあたっては、自らの変化も必要だった。
「学生と社会人の違いはあり、ここは自分にとって新しい経験です。“指導する”という感覚は学生の方が大きく、感情的に指導したり、諭したりすることが圧倒的に多くなりました。その中で相手の考えを引き出すようにしています。どう思うのか、何を考えているのか対話をしながら、一方的ではない形をとっています」
ただ勝てばいいわけではない。これまでの“選手主体”のチーム作りを継承しつつ、応援し、期待してくれている方に対する対応であったり、トレーニングに対する姿勢といったところでも尊敬され、かつ、勝ち続ける集団となっていくことが、目指すところだ。
故・北島忠治監督の最後の優勝である1996年度から、田中澄憲監督による2018年度の優勝まで実に22年、栄冠から遠ざかった明治大の歴史を「つらい時代」と神鳥監督は振り返る。
「伝統の一戦である早明戦で60点近くの点差をつけられ敗退したことや、明治の試合からお客さんが遠ざかる時もありました。そういう時期を乗り越えて今があります。大学選手権での目標は優勝しかありません。やるからには一番を目指します。ただ、優勝は結果であって、誰もコントロールできるものではありません。国内トップレベルのチームを指導してきた経験を生かしつつ、優勝争いを何十年と続けられるチームを作っていくことが、私のやるべきことだと思っています」