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マラソン・駅伝

急転直下の五輪マラソン札幌移転問題。今後もIOCによる「会場変更」が絶対にないとは…

石田英恒

2019.11.08

五輪のマラソンはレースであると同時に、世界に向けた開催都市の紹介でもある。それがドーハのレースをきっかけに急転直下、会場が東京から北海道へ移転となった。(C)Getty Images

五輪のマラソンはレースであると同時に、世界に向けた開催都市の紹介でもある。それがドーハのレースをきっかけに急転直下、会場が東京から北海道へ移転となった。(C)Getty Images

 2020年東京オリンピックの花形であり、オリンピックを代表する競技であるマラソン、そして競歩の会場が、東京から札幌に移転して開催されることになった。

 東京の猛暑が原因という。この会場移転話は急に飛び出し、10月16日、IOC(国際オリンピック委員会)が、東京から札幌への会場移転案を発表。11月1日にはIOC、東京都、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会、政府による4者協議が行なわれ、札幌への会場移転が正式決定した。あまりにも唐突な会場変更になにか裏事情があるのではないかと勘繰りたくもなる。実際、さまざまな憶測が飛び交うことになった。

 東京の夏の暑さは、いまや広く海外でも知られている。そのためか、これまでも馬術、トライアスロン、自転車競技、7人制ラグビーといった競技から東京の暑さ対策を求める声が上がり、時間の変更があった。野球のデーゲームをドーム球場で開催してほしいとの意見もあった。

 考えようによっては、今回の事態につながる不穏な動きだった。海外でも東京の夏は暑いというイメージが先行していて、IOC、各国際競技連盟が不安を持っていたのだ。東京都、各国内競技団体は暑さ対策に真剣に取り組んできたが、それを対外的にもっと発信しておくべきだったかもしれない。
 
 今回のIOCの決定の理由は東京の暑さで、2019年9~10月にカタール・ドーハで開催された世界陸上の女子マラソンでのアクシデントが原因になった。

 猛暑と高湿度のため、女子マラソンは出場選手の4割超にあたる28選手が途中棄権した。また、男子50キロ競歩も猛暑で途中棄権者が多く出た。ドーハの女子マラソンは9月27日深夜0時過ぎにスタートしたにも関わらず、気温が32度超え、湿度が73パーセント超えを記録した。ドーハの夏の最高気温は40度、湿度は90パーセント近くになる。IOCは、このドーハの暑さから東京の夏の暑さを連想したのだ。

 しかし、ドーハの気候をよく知るスポーツ関係者は、「カタールのドーハと東京の気候を単純に比較するのは無理がある」と語る。東京の暑さは近年、殺人的とも言われるようになった。だが、「ドーハの気温は東京よりも1つ2つ上のランクで、実際に命に関わるほどの暑さ。東京は夏も外を出歩く人はいるが、ドーハでは外に出歩く人さえいない」と前出の関係者は続ける。

 今回のドーハのレースは、8月の東京で早朝スタートのレースをするよりも悪条件だった可能性が高いという。東京もドーハと同じような猛暑というイメージだけが先行し、IOCの思い込みから、詳細なデータ分析を行なう前に東京はダメだと決定された可能性もある。
 
 今後、マラソン、競歩以外の会場変更が絶対ないとは言い切れない。

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