ラグビー

格安だったラグビーW杯の放送権料。一大ブームのなか、もっとも得をしたのは誰だったか

石田英恒

2019.11.09

日本戦のみならず、試合会場はどこもほぼ満員札止め状態。ラグビーW杯は大盛況のもとに閉幕した。写真:茂木あきら(THE DIGEST写真部)

 ジェイミージャパンの大躍進で日本国内にラグビーブームを巻き起こし、大成功に終わったラグビーワールドカップ2019日本大会(9月20日~11月2日)。プール戦全勝で、史上初の決勝トーナメント進出を成し遂げた日本代表の活躍はまだ記憶に新しいが、実のところ、放送権料の視点から見ても大金星だった。

 今回、ラグビーワールドカップの日本における放送権を獲得したのは日本テレビ、NHK、JSPORTS(ジェイスポーツ)の3つの放送局だ。放送局側も大会前は、大会がこれほどの盛り上がりを見せ、高視聴率を叩き出し、ブームを起こすとは予想していなかっただろう。
 
 ひとつは、日本代表のベスト8進出の可能性がかならずしも高くなかった点が挙げられる。ラグビーは対戦チーム同士に力量差がある場合、実力上位のチームに下位のチームが勝つのは難しく、番狂わせが起きにくい競技である。日本は前回の2015年イングランド大会のプール戦で南アフリカを破るジャイアントキリングを起こしたものの、結局は決勝トーナメント進出は果たせなかった。今大会も期待はされながらも、やはり8強は厳しいのではないかというのが、大会前の一般国民の正直な気持ちだっただろう。

 
 もうひとつは、同時期に各局が大スポーツイベントを中継し、競合スポーツ大会の放送を予定したからだ。各局のラインナップはかなり強力だ。TBSは世界陸上(9月27日~10月6日、カタール・ドーハ)を、テレビ朝日は世界体操選手権(10月4日~13日、ドイツ・シュツットガルト)を、フジテレビはワールドカップバレー(女子9月14日~29日、男子10月1日~15日、日本)を、ラグビーワールドカップと同じ時期に放送した。

 3大会はいずれも、日本代表選手やチームの活躍が期待できる競技で、過去の実績から視聴率もある程度は見込める大会だ。日本の放送権料は、世界陸上が50億円(推定)、世界体操は30億円(推定)、ワールドカップバレーは30~40億円(推定)とみられている。それに比べてラグビーワールドカップの放送権はNHK、日本テレビ、JSPORTSの3局合わせて、20億円弱(推定)と格安だった。2019年6~7月に開催されたFIFA女子ワールドカップフランス2019の放送権料が30億円(推定)なので、それよりも低い。
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次大会の放送権交渉では法外な額を要求される!?