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「彼女の真髄を見たよ」北京五輪・女子シングルのカオスで愛弟子が目撃した“人間トゥトベリーゼ”の実像「冗談を飛ばしてきた」

THE DIGEST編集部

2022.02.24

競技前のワリエワに言葉を贈るトゥトベリーゼ氏。愛弟子の男子選手が北京五輪でのエピソードを明かした。(C)Getty Images

 北京五輪の開催期間中に巻き起こった、ROC(ロシア・オリンピック委員会)のカミラ・ワリエワを巡るドーピング疑惑。一大騒動に付随して大きくその存在がクローズアップされたのが、ワリエワの師事するロシア人名コーチ、エテリ・トゥトベリーゼ氏である。

 平昌五輪の女子フィギュアスケートで金メダルに輝いたアリーナ・ザギトワを筆頭に、同銀メダルのエフゲニア・メドベージェワら数多の名スケーターを育て上げ、彼女が主宰する育成施設「サンボ70」は黄金期を築いてきた。今大会でも、ワリエワこそフリーでらしくないミスが相次いで4位に終わったものの、アンナ・シェルバコワが金メダル、アレクサンドラ・トゥルソワが銀メダルと愛弟子たちが躍動した。ペアで銀メダルを獲得したウラジミール・モロゾフ&エフゲニア・タラソワ組も門下生だ。

 ドーピング問題への関与が取り沙汰されるなか、トゥトベリーゼ氏の言動が注目を浴びる。女子シングル・フリーで演技を終えて引き上げてくるワリエワに対して、「なぜ諦めたの? 説明しなさい!」と詰問する様子が国際映像に乗って、世界中に拡散。泣きじゃくるトゥルソワが氏の抱擁を拒否して反旗を翻すなど、ショッキングな場面が相次いだ。

 ワリエワへの非情な振る舞いに対し、一斉にバッシングを受ける展開に。その後は欧米メディアで厳しすぎる指導スタイルが、次から次へと具体例とともに暴露され、「児童虐待だ」「若き才能の使い捨て」などと非難する声がいっそう高まった。

 それでも、ロシア国内では前人未到の偉業を成し遂げてきた彼女を擁護するムードが沸き起こる。政府要人やフィギュア関係者、さらには過去の五輪メダリストや名指導者たちがこぞってトゥトベリーゼ氏を援護射撃し、事態の収束を図っている。
 

 今回ロシア・メディア『Match TV』の取材に応じたのが、ロシア出身でジョージア代表のモリシ・クビテラシビリだ。北京五輪は男子シングルを10位に終えた26歳。彼もまたトゥトベリーゼ氏の門下生で、エキシビションではトゥルソワと共演し、ディズニー映画「アラジン」のジーニーに扮して好評を得たのが記憶に新しい。

 クビテラシビリは「スケートを辞めようと落ち込んでいたとき、両親に『トゥトベリーゼのところへ行くか?』と勧められて門を叩いた。いまの僕があるのは彼女のおかげだ」と語り、「彼女は本当に強いひと。普段どれだけその強い感情を隠しているかがよく分かった」として、北京五輪でのエピソードを紹介した。
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「たしかにエテリの指導は生易しいものじゃない。でも…」