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ロシアの侵攻を受ける祖国への金メダル。「毎日泣いている」ウクライナ選手が語ったパラリンピック勝利の意味【北京パラ】

THE DIGEST編集部

2022.03.06

戦火をかわして何とか辿り着いた北京の地で勝利を掴んだボウチンスキー。彼は、レース後に祖国への想いを語った。(C)Getty Images

戦火をかわして何とか辿り着いた北京の地で勝利を掴んだボウチンスキー。彼は、レース後に祖国への想いを語った。(C)Getty Images

 文字通りの苦境を乗り越えての金メダルだ。

 3月5日、北京パラリンピックでバイアスロン男子スプリント立位が行なわれ、ウクライナのグリゴリー・ボウチンスキーが優勝。ロシアの軍事侵攻を受けている母国に今大会初の金メダルをもたらした。

 ウクライナ・パラリンピック委員会のワレリー・スシュケビッチ会長が、「ここに来られたのは奇跡だ」と語ったように、ロシアによる侵攻を受けるウクライナから北京までの道のりは決して平たんではなかった。ポーランドやオーストリアを抜け、なんとか辿り着いていた。

 それだけに「絶対に負けられない」という強い想いがあった。2014年のソチ・パラリンピックでも優勝を経験していた33歳は、45.8秒という好タイムを叩き出して、見事に頂点に立った。

 レース後に「正直言って、ロシアが攻めてきた時には何が起こっているのかを理解できなかった」と祖国への想いを語ったボウチンスキーは、あらためて自らの胸中をフラッシュインタビューで告白している。

「私はここで何ができるかをレース前に考え、とにかく勝とうという答えに至った。金メダルをウクライナの人々に捧げるんだとね。いまも苦しむ人たちの平和のために」

 さらに「何とか戦争を止めてほしい。子どもたちとってもそれが重要なんだ」と訴えたボウチンスキーは、こう続ける。

「私はここにくるまで本当に大変だった。毎日のように泣いているし、何もできない歯がゆさを感じている。誰もが戦争について、私の国やその国民、大統領について考えるべきだと思っている。とにかく私はウクライナを愛している」

 歓喜の金メダルとは言えないかもしれない。しかし、それでも「ウクライナに捧げたい」と勝ち取ったボウチンスキーの想いは、かならず祖国の人々に届いているはずだ。

構成●THE DIGEST編集部

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