バレーボール

がん闘病中の東レ・藤井直伸へ、バレー界に広がる“心の支援“の輪

北野正樹

2022.03.06

闘病中の藤井へエールを送る東レの選手たち。写真提供:東レアローズ

 バレーボールV1リーグ、東レの主将で日本代表セッターの藤井直伸が、ステージ4の胃がんを公表してから初めて東レの試合が3月5日、大阪府枚方市のパナソニックアリーナで行なわれた。

 試合は東レが、ホームチームのパナソニックを3-1で下し勝利。今はチームが違うものの、同期入団の3人が始めた募金活動は、賛否の声もありわずか4日間で打ち切られる結果に終わった。しかし、会場では「#心はひとつ」と記されたタオルが振られたほか、パナソニックチームから回復を祈念する千羽鶴が送られるなど、バレー界に様々な形で"支援"の輪が広がりつつある。

「この1週間、いろいろなことがあったが、チームが1つになって勝てた」。試合終了後のヒーローインタビューで、アタックでパダル・クリスティアンに次ぐ16得点を挙げた富田将馬が試合を振り返ると、1092人の観客から大きな拍手が起きた。

 藤井が、自身のインスタグラムでステージ4の胃がんであることを公表したのは、2月27日の夜。チームは当日、正午からホームの静岡・三島市民体育館で戦っており、公表後に試合をするのは5日が初めて。
 
 両チームの監督や選手たちからは、藤井の早期回復を願う声が相次いだ。

「この場にいなくてもこれだけのパワーをくれる彼のために、頑張らなくてはいけないという思いがあった。絶対に負けられない気持ちが、チーム一丸として体現することが出来た。この思いが彼に届いてくれればいい」

 2-1で迎えた第4セット、32ー31から33点目をサービスエースで決めパナソニックを突き放した高橋健太郎が、安堵の表情を浮かべた。

 藤井が体調の異変を訴え戦列離脱後、代わりに起用されたセッターとのコンビネーションがなかなか合わなかった高橋は、「藤井さんのトスを信頼して打っていたから、『早く試合に出て』などと文句を言ったりしていた」といい、公表直前に知らされた診断内容にはショックを受けたという。

 ミドルを生かす藤井のトスワークで才能を引き出され、日本代表として2020東京五輪にも一緒に出場し、「彼のおかげで貴重なことを経験させてもらい、感謝しかない。藤井の分もみんなで背負っていきたい」と語った李博は、「ともに頑張っているという思いを共有したかった」と坊主頭だった。