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格闘技・プロレス

女子選手がなぜデスマッチ? 世羅りさが“血まみれのリング”に人生を懸けたワケ「痛いのに痛くないような感覚」

萩原孝弘

2022.04.26

身体中から血を流すダメージを受ける世羅。それでも彼女がこの凄惨な闘いの場を追い求める理由はいったい何なのか。写真:萩原孝弘

身体中から血を流すダメージを受ける世羅。それでも彼女がこの凄惨な闘いの場を追い求める理由はいったい何なのか。写真:萩原孝弘

「やりたかったデスマッチ、どうだ? 気持ちいいか?」

 顔や背中など全身から真っ赤な鮮血を流し、リング上で大の字となった世羅りさに向かって、佐々木貴は問いかける。ダメージが色濃く残るなかでも、彼女は首を大きく縦に振った。

 さらに「これってデスマッチをやったことがある人間にしかわからない快感だよな!」と続いた佐々木の言葉に、さらに力強く頷いた。

「デスマッチをやったものにしかわからない快感……。血まみれでぶっ倒れてるのに、意外と頭は冴えていて、感覚も研ぎ澄まされていて、痛いのに痛くないような、それでいてお客様の声援や拍手はしっかり聞こえていて、何とも言いがたい幸福感に包まれるという感じ……。これはデスマッチファイターの特権」

 世羅にとって、自ら選んだ“死闘道”が間違いではなかったと実感した瞬間だった。

 4・24新木場にて旗揚げを果たしたデスマッチ&ハードコアユニット『プロミネンス』のリーダーでもある世羅りさは、人気デスマッチ団体『プロレスリングFREEDOMS』を率いる佐々木貴を相手にシングルで対峙。無数の蛍光灯が飛び散る“男と女の戦い”は、新品のプロミネンスの純白のマットが見る見る赤く染まる、文字通り凄惨な果たし合いとなった。

 佐々木の蛍光灯を絡めたバズソーキックに、世羅が涙を呑んだ。激闘を物語る終焉を迎えた試合には「トップとしての技量とリーダーの素質」と、さらにプレイヤーとマネージャーとしての帝王学を佐々木から会得するという、2つのテーマがあった。

 そのテーマで鑑みれば、収穫のある試合だった。世羅は佐々木から「組織、ファンの想い、肉体、すべてを背負って身体を張って戦う覚悟」と「選手、お客さん、メディア、育ててくれた古巣の団体への感謝」という金言を送られもした。

 試合後にやっとの思いで上半身を起こした世羅は「たしかに前の団体から大勢引き連れて逃げた、テロリストだと言われても仕方のないことかもしれない。他の団体にハードコア・デスマッチを名乗るなと言われても仕方がないぐらい、不出来な選手かもしれない」と振り返りつつ、「そんな自分は今日で辞めにします! 今日旗揚げしたので今日からは新しい『新世羅りさ』として、誰にも名乗るななんて言わせない、不出来だなんて言わせない」と宣言。

 そして、「自分がプロミネンスを引っ張っていくリーダーだ!」とリング上で佐々木へ返答。あらためて己の覚悟を新たにした。この2人の魂のこもったやり取りはしっかりとファンの心に突き刺さり、会場は万雷の拍手に包まれた。
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