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格闘技・プロレス

女子選手がなぜデスマッチ? 世羅りさが“血まみれのリング”に人生を懸けたワケ「痛いのに痛くないような感覚」

萩原孝弘

2022.04.26

脳天をめがけて蛍光灯で叩かれる世羅。会場に響き渡った「パァーン」という乾いた音が痛みの重さを物語った。写真:萩原孝弘

脳天をめがけて蛍光灯で叩かれる世羅。会場に響き渡った「パァーン」という乾いた音が痛みの重さを物語った。写真:萩原孝弘

 そもそも世羅は2012年に“プロレスでハッピー”を掲げるアイスリボンでデビューした。デスマッチとは正反対のレスリングスタイルがウリの女子プロ団体所属だったが、彼女は「練習生の時にはすでにデスマッチに惹かれていましたね」と告白する。

「まだプロレスのこともそんなに知らない時に、大日本プロレスの星野勘九郎&稲葉雅人の“平成極道コンビ”の蛍光灯デスマッチを初めて見て、星野選手の戦いに憧れました。同時に『私が目指すところはここだな』と思いました」

 かなり早い時期から、内に秘めた本能は目覚めていた世羅は、キャリアを重ねるうちに、なんの制限もない闘いへの憧れを強めていった。

「デスマッチの自由さ。ルールもさることながら、どんな凶器を持ち込むのか。その凶器をどのように扱うか考えることも楽しみの1つ。さらにそれに耐えて、生き様をみせることも魅力です」

 嬉々として、「死地を駆ける戦士のような、こんなにやっても人間が輝ける姿をお見せしたい」と語った世羅は、「デスマッチでしか表現できない」を求め、「それに特化しているわけではない場所で続けていても上は目指せない」と覚悟。昨年12月にアイスリボンを去った。

 だが、「『ハードコアやデスマッチで上を目指したい』とは言ってもハードコアやデスマッチの女子団体があるわけでもない」という現状だった。しかし、異色の道を突き進もうとする彼女のもとには、同志たちが集まった。

「自分で作ればいいのでは? と思ったところに同志たちが集まった。男女の差は無い、女なんだからそんなことやるな、そんな時代遅れな考え方はクソくらえって考えの同志です」

 運命に導かれるようにして、偶然にも集まった5人の女戦士たちによって、前代未聞のユニット『プロミネンス』は誕生した。その旗揚げ戦はチケット完売の盛況ぶりで、メインでは伸び盛りの鈴季すずが盟友でもある藤田あかねを撃破し、話題を作った。

 この試合でパートナーの“デスマッチのカリスマ”と称される葛西純に「もうすでにライバル」と認められた鈴季は、「自分が女子でデスマッチをやってる選手を初めて見たのが世羅。そんな人に憧れてプロレスラーになった。いつかはデスマッチでシングルをやりたいとずっと思っていた」と告白。彼女の願いは叶い、5・29の旗揚げ2戦目で世羅との電撃対戦が決定した。

 自らを慕って集まった同志との大一番を「待ってました、この一言に尽きます」と明かす世羅は、「彼女の成長をずっと隣で見てましたから。なんでこのタイミング?と思う方もいるかもしれませんが、このタイミングだから最高なんです。まだまだ若いもんには負けませんよ!」と、女子プロレス界でも期待のホープとの一騎打ちに舌なめずりをする。30歳となった彼女のなかで、デスマッチはワクワクするような高揚感があるのかもしれない。

 ファイトスタイル、ジェンダーなど、すべてを超越したプロミネンスは、覚悟を決めたリーダーのもと、消えない傷を勲章にしてマット界に“紅の炎”を燃やし続ける。

取材・文●萩原孝弘

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