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【名馬列伝】代替種牡馬から生まれた稀代の優駿キタサンブラック。鍛え抜かれたタフさでG1レース7勝の王者に<前編>

THE DIGEST編集部

2022.05.27

G1レースを計7回制したキタサンブラック。写真:産経新聞社

G1レースを計7回制したキタサンブラック。写真:産経新聞社

「代替種牡馬」という競馬用語をご存じだろうか。

 現役時代に優れた競走成績を残し、種牡馬としても成功した馬が出現した場合、成績は劣っていても、血統を評価してその兄弟を種牡馬として供用するケースが、競走馬生産の世界ではしばしば起こる。これを「代替種牡馬」、もしくは「代用種牡馬」と呼ぶ。

 代替種牡馬は種付料が手ごろであるため、先に成功した種牡馬の高額な種付料は出せない小規模の生産牧場にとっては有難い存在となる。そして、時としてそこから驚くような優駿が現れることがあるのも競馬の面白さの一つだ。
 
 日本の歴代賞金王となったキタサンブラックの父であるブラックタイドは、無敗で三冠を制するなどして日本競馬における最強馬の呼び声も高いディープインパクトの全兄(父母ともに同じの兄)である。

 この兄弟の血統は、父が日本競馬の血統地図を変えたと言われるほどの大種牡馬であるサンデーサイレンス、母が英国のオークスで2着に入った名牝ウインドインハーヘア。馬主や調教師にとっては垂涎の良血である。

 ブラックタイドは日本最大のセリ市であるセレクトセール(2001年)において金子真人オーナーによって9700万円という高額で落札された期待馬だった。

 3歳時にはスプリングステークス(GⅡ)に優勝し、皐月賞(GⅠ)では2番人気に推されるほどの存在だったが、皐月賞で16着と大敗したのち、サラブレッドにとって不治の病とされる屈腱炎(腱の部分断裂による炎症)を発症。2年間の休養を経て復帰は果たしたが、その後は勝利を挙げられないまま7歳まで現役生活を続ける。

 一方、ディープインパクトは2002年のセレクトセールで金子真人オーナーに7000万円で落札される。

 その活躍はもはや詳述する必要はないだろう。

 2005年のクラシック三冠を無敗で制するなど、武豊騎手をして「飛んでいるような走り」と言わしめた圧倒的な末脚の切れでG1レースを7勝し、2007年から鳴り物入りで種牡馬入りした。

 初年度に設定された種付料は1200万円という高額ながら、生産者からの要望を断らねばならないほどの人気を集め、結果215頭に種付けを行った。

 こちらもその後の活躍は説明の必要がないだろう。三冠馬コントレイルを代表に、2012年から昨年の2021年まで、10年連続リーディングサイアーに輝いている。

 ブラックタイドは、賢弟ディープインパクトの活躍によって起こった生産者からの要望を受け、重賞1勝という成績でありながら、2009年から種牡馬入りすることになる。
 
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