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【名馬列伝】「長い距離は持たない」と言われたキタサンブラックが見せつけた意地と底力<後編>

三好達彦

2022.05.27

血統から長距離は不向きと言われたキタサンブラック。敗戦から立ち直るタフさを身に着けて次々とタイトルを奪取した。(C)Getty Images

血統から長距離は不向きと言われたキタサンブラック。敗戦から立ち直るタフさを身に着けて次々とタイトルを奪取した。(C)Getty Images

 クラシックを狙うにはギリギリのタイミングである2015日1月31日。キタサンブラックはようやくデビューの舞台に立った。

 単勝3番人気で迎えた新馬戦は、東京の芝1800メートル。道中は後方の10番手あたりを進んだが、直線を向くと豪快な末脚を繰り出して、2着に3馬身差をつける圧勝で飾って見せた。

 続く2月の500万下(現1勝クラス)も東京を舞台に選び、距離を延ばした芝2000メートルに挑戦。9番人気と評価は低かったが、直線では2番手からあっさり抜け出すと、またも2着に3馬身差をつけて快勝。この勝利でマスコミに力量馬として注目されるようになった。

 そして3戦目には、クラシック競走への出走権をかけていよいよ重賞のスプリングステークス(G2)に出走。ここでも単勝は5番人気に甘んじたが、2番手でレースを進めて4コーナーで先頭に立つと、激しく追い込む1番人気のリアルスティールをクビ差抑えて優勝。デビューから無敗の3連勝で勇躍、クラシックへ駒を進めた。

 ここまでの3戦で人気にならなかった原因について触れておきたいことがある。それは、キタサンブラックの母の父がサクラバクシンオーだったことだ。

 サクラバクシンオーは日本競馬史に残る代表的な短距離馬。1993年、スプリンターズステークス(G1)連覇を含め、1400メートル以下の重賞を4勝しており(逆に1600メートル以上のレースでは勝利がない)、競馬界においては「究極のスプリンター」と認識されていた。

 種牡馬としても、2002年の高松宮記念(G1、中京・芝1200メートル)を制したショウナンカンプに代表されるように、産駒が活躍したのも、その多くがマイル以下の距離でのもので、より「サクラバクシンオー=スプリンター」のイメージが強く刷り込まれていた。

 そのため、母の父にサクラバクシンオーを持つキタサンブラックは「長い距離はもたない」という評価をくだされ、そのイメージはのちにまで続いていった。
 
 そして迎えた皐月賞(G1)。戴冠を狙うべく臨んだキタサンブラックだったが、そこにはデビュー前から評判が鳴り響く強敵が待っていた。キングカメハメハの仔、ドゥラメンテがその馬である。

 キタサンブラックは2番手を進み、直線でも粘り腰を見せはしたが、ドゥラメンテ、リアルスティールに交わされて3着。初めての敗戦を喫した。

 続く日本ダービー(G1)でも2番手から進んだものの直線で失速。勝ったドゥラメンテから2秒3も離された14着に涙を飲んだ。

 そして、この大敗が「母の父サクラバクシンオー」であるがゆえに長距離は不向きだという印象を強化することにもなった。
 
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