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【名馬列伝】「長い距離は持たない」と言われたキタサンブラックが見せつけた意地と底力<後編>

三好達彦

2022.05.27

 しかし夏を越して、さらに鍛えられたキタサンブラックは秋シーズンに逆転を狙って攻勢をかける。2200メートルのセントライト記念(G2)に6番人気で出走すると、2番手からの抜け出しで快勝した。

 ここでポテンシャルの高さを再認識させたにもかかわらず、3000メートルの菊花賞(G1)では、またも距離適性の問題を取りざたされ、単勝は5番人気にとどまった。

 だが、キタサンブラックは、道中はインの5番手あたりで息を潜めて進み、最後の直線で最内のスペースを突いて激走。リアルスティールをクビ差で差し切って、念願のG1タイトルを手に入れた。

 表彰式のあと、自身も初のG1制覇だった北島三郎オーナーが人気曲の『祭り』を披露したのも話題となって、キタサンブラックの人気は一気に国民的な注目を集めるようになった。

「もっと強くなれる」という清水調教師の厳しいトレーニングにもへこたれずに成長を続けたキタサンブラックは、2016年から新たに武豊騎手を鞍上に迎えて勝ち星を積み重ねる。

 ときに取りこぼしはあったものの、すぐに敗戦から立ち直るタフさを身に着けたキタサンブラックは、天皇賞(春)の2連覇をはじめ、天皇賞(秋)、ジャパンカップ、大阪杯と次々にG1タイトルを奪取。そして、ここを勝てば歴代賞金王(当時)に立てるというラストランの有馬記念も、決然と先頭を切る堂々たる逃げを打って優勝。この勝利で通算獲得賞金は18億7684万3000円にも達し、G1レース7勝も歴代最多タイ記録(当時)となった。
 
 レース後には夕闇のなかをスポットライトに照らされて引退セレモニーが行われ、数万人のファンと北島オーナーら関係者に見送られてターフを去った。

 年明けの1月には、前年に続いて2年連続でJRA賞年度代表馬に選出されたとの報が届けられた。また、2020年には史上34頭目となる顕彰馬に選定されている。

 2018年から北海道・安平町の社台スタリオンステーションで種牡馬入りしたキタサンブラックは大人気を博し、130頭の交配相手を集め、そのなかから早くも東京スポーツ杯2歳ステークス(G2)を制するイクイノックスを出して、種牡馬としての能力の高さをアピールした。

 長期休養後のレースとなった皐月賞でいったんは先頭に立つ積極的な競馬で2着に入ったイクイノックスの評価は日に日に高まるばかり。人気を集めることが必至であろう日本ダービーで、父の無念を晴らし、また種牡馬としてのキタサンブラックの名を高める孝行息子となるか。ファンは固唾を飲んでその走りを見守っている。

文●三好達彦

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