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【名馬列伝】衝撃の復活劇とライバルを差し切った名勝負! グラスワンダーが二度の有馬記念で魅せた底力<後編>

三好達彦

2022.07.17

98年に続き99年の有馬記念を制したグラスワンダー(7番)。スペシャルウィークとの名勝負を演じた。写真:産経新聞社

98年に続き99年の有馬記念を制したグラスワンダー(7番)。スペシャルウィークとの名勝負を演じた。写真:産経新聞社

 クラシック競走と同様に、天皇賞・秋(GⅠ、東京・芝2000m)はクラシック競走と同様に外国産馬に開放されていなかったため、次の目標をジャパンカップ(GⅠ、東京・芝2400)に定めていたグラスワンダーは、そのステップとしてアルゼンチン共和国杯(GⅡ、東京・芝2500m)に出走するが、ここでもかつての活気ある走りは見られないまま6着に沈む。そのため陣営はジャパンカップを見送り、じっくり立て直して有馬記念(GⅠ、中山・芝2500m)に臨む決断を下した。

 闘争心を甦らそうと、的場は最終追い切りでこれまでになくびっしりと愛馬を追った。するとその後、馬の具合が目に見えて良化し、馬体の張りも復帰後でいちばんの状態まで戻ってきた。

【動画】グラスワンダーとスペシャルウィークの二頭が並んでゴール! 白熱の99年有馬記念!!

 それでも、この有馬記念はセイウンスカイ、エアグルーヴ、メジロブライトなどのGⅠウィナーが顔を揃えていたため、グラスワンダーはオッズ14.5倍の4番人気に甘んじたのは仕方ないことだった。

 しかし、グラスワンダーはその低評価を覆して劇的な復活を見せる。

 中団を進むと2周目の第3コーナーから位置を押し上げながら最終コーナーを回って直線へ向いた。そして鞍上のゴーサインを受けるとぐいぐいと末脚を伸ばし、エアグルーヴを突き放すと、バテたセイウンスカイを交わして先頭に躍り出る。後方から追い込んできたメジロブライトを半馬身抑えてトップでゴールへ飛び込んだ。一度は失われかかったグラスワンダーのファイティングスピリットを引き出した、的場の執念を感じる勝利でもあった。

 外国産馬が有馬記念を勝ったのは史上初のこと。また7戦目での優勝は史上最少キャリア記録でもあった。

 1999年もやや順調さを欠いて始動が遅れたが、初戦の京王杯スプリングカップ(GⅡ、東京・芝1400m)でエアジハードを降して勝利を挙げたものの、続く安田記念(GⅠ、東京・芝1600m)では大接戦ながら、ハナ差でエアジハードにリベンジを許して2着に敗れた。

 しかし、転んでもただで起きないのがグラスワンダーである。

 同い年の日本ダービー馬であるスペシャルウィークと初の直接対決となる宝塚記念(GⅠ、阪神・芝2200m)は、外国産馬へのクラシック競走の開放が成されていなかった時代だけに、ファンのあいだで空前の盛り上がりを見せた。
 
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