格闘技・プロレス

瞬間的に意識も飛んだ激闘の舞台裏。“最強の男”堀口恭司が金太郎戦で魅せた世界水準「格闘技は面白い」【RIZIN】

橋本宗洋

2022.09.27

流石の試合運びで完勝を収めた堀口。勝つ喜びを抑えきれなかった彼は笑顔でガッツポーズを披露した。写真:田中研治(THE DIGEST写真部)

「こういうこともあるから格闘技は面白いんです」

 試合を終えてそう言ったのは堀口恭司(アメリカン・チーム)。RIZINバンタム級チャンピオンであり、元UFCの上位選手だ。彼は9月25日の『RIZIN.38』で2020年の大晦日で朝倉海を破って以来、1年9カ月ぶりに日本でリングに立った。

 アメリカに拠点を構え、現地のジムで練習を積んでいる堀口は、2019年にアメリカのメジャー団体『Bellator』に初参戦。Bellator222ではダリオン・コールドウェル(アメリカ)に競り勝ってバンタム級のチャンピオンベルトも巻いた。しかし、直近2戦はいずれも敗戦。昨年12月に実現したセルジオ・ペティス(アメリカ)との防衛戦では、ショッキングな失神KOを喫して王座からも陥落した。ゆえに今回のRIZIN参戦で、ファンが望んだのは、"母国での復活"だったに違いない。

 対戦相手に選ばれたのは金太郎(パンクラス大阪稲垣組)。RIZINバンタム級で活躍する選手であり、『THE OUTSIDER』からパンクラス、そしてRIZINとステージを上げてきた。とはいえ、実績で言えば堀口とは大きな差があるため、一部の格闘技ファンからは批判も浴びた。一方で"一発"のあるファイトスタイルはやはり魅力的。実力で勝る堀口に対して、"まさか"があり得る選手だと言えた。
 
 実際、その"まさか"が起こりかけたのだ。1ラウンド、スタンドの展開の中で距離を詰めてきた相手に対して、金太郎の左ストレートが炸裂。もろに受けた堀口は真後ろに倒れ込んだ。

 会場が騒然となったワンシーン。しかし、堀口によると、これはフラッシュダウン。意識が飛んだのは一瞬だけ。倒れたとほぼ同時にそのまま後転して立て直した31歳は、金太郎に追撃の隙を与えなかった。

 しかし、世界水準のファイターはここからしっかり展開を変えてみせた。1ラウンド中にテイクダウンを奪うと、2ラウンドにもタックルに成功。グラウンドでマウントポジションを取ると、そこから得意の肩固めでフィニッシュした。金太郎はタップこそしなかったものの"落ちた"形だった。

 抜擢に対する批判に金太郎は「全員黙らせる」という気持ちだった。しかし、同時に、アンチの声が「奮い立たせてくれた」とも語る。結果として敗れてはしたが、その闘いぶりを見て、それでも批判する者は少ないのではないか。彼の闘いは立派なものだった。
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「海外でやり返したい」に込めた想い