10月10日に開催される『出雲駅伝』で、駅伝シーズンが幕を開ける。この学生三大駅伝の初戦に、中央大が９年ぶりに戻って来た。長い低迷期に苦しんだ伝統校は、今季充実した戦力が揃っており、チャレンジャーながら「３位以内」を目標に掲げている。そんな中央大を率いる藤原正和監督が取材に応じ、現在のチーム状況と意気込みを語ってくれた。

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　2022年の箱根駅伝で６位となり、出雲路の切符を手にした中央大。藤原監督は、「去年の先輩たち（社会人１年目の代）に恩返しができるような走りをするというのが大前提」としながら、「戦力的にも充実してきたので、まずは手堅く３位以内が目標。そして今年度の大きな目標は、全日本駅伝、箱根駅伝もきっちりと表彰台に乗ること」と狙いを定めた。

　そんな監督にライバル校を問うと、「いやいやそんな。うちなんてまだチャレンジャーなんで」と謙虚に答えたが、そこには沸々と湧く闘争心があった。

「でも最終的に青山学院さんに勝たないと箱根で優勝はない。またタレントが揃っており、うちと同じようにスピードを重視したつくりの駒澤大学さんも意識している。このあたりのチームを倒していきたい」

　今大会３位以内を狙うためのキーマンには、３年生エースの「吉居大和」を挙げた。今年１月の箱根駅伝１区で、箱根最古となる区間記録を15年ぶりに塗り替えた吉居大。５月に腸脛靭帯（ちょうけいじんたい）を痛めたことで今季出遅れた彼だが、故障明けすぐの出走となった７月16日のホクレン・ディスタンスチャレンジ千歳大会の5000メートルで13分31秒03と、学生トップクラスの実力を誇示。これには指揮官も「ちょっと底が知れないなと久々に思った」と目を丸くした。

　駅伝シーズンに向けて状態を上げたい吉居大だったが、８月上旬に故障を再発。これには「もっとスピードを出そう、パワーを出そうとお尻の筋肉ではなく、股関節の横の筋肉を使い膝が内側に入ってしまっている。あくまで進化しようとしているなかでのアクシデント」と前向きに捉える同監督は、今回も「僕たちが思っているパフォーマンスを上回ってくるのでは」と期待を寄せた。
  　また箱根駅伝に２度出走経験のある千守倫央（４年生）の復活も期待できる。「昨年は走ることに対して前向きになれない部分があったが、自分自身と向き合う時間をつくらせた。今年は非常に面白い。本来軸にならないといけない選手である」と評す。

　頼もしい上級生に引けを取らず、下級生にも勢いが見られる。９月の全日本インカレ5000メートルでは、吉居大和の弟・駿恭（１年）が４位、溜池一太（１年）が９位と学生トップクラスの選手と渡り合うと、10月１日の日本グランプリシリーズ新潟大会の5000メートルで共に自己ベストを更新し、好調ぶりをアピールした。

　経験者の不在を逆手にとった41歳の監督は、インタビューの最後に「『出雲駅伝を一番楽しんだチームになろう』と学生に話している。思いっきりやってみて、色々学んで帰ってきたい」と話し、「最後はスタッフの腕の見せ所ですね」と引き締めた。

　白地に赤の「C」マークを身につけた選手たちが出雲路を９年ぶりに駆ける。果たして、中大旋風を巻き起こすことはできるだろうか――。

取材・文●永野祐吏（THE DIGEST編集部）

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