格闘技・プロレス

「勝ったけど、勝ってない」朝倉未来がMMA再起戦後に漏らした不満。“単なる格闘家ではない”からこそ求めた「本物のプロの闘い」

橋本宗洋

2023.04.30

重い打撃を効かせ、牛久を苦しめた未来。しかし、仕留めきれなかった事実に彼は肩を落とした。写真:金子拓弥(THE DIGEST写真部)

 不満の残る勝利ではあった。

 4月29日の『RIZIN LANDMARK 5』(国立代々木競技場第一体育館)。チケット完売、当日券なしという人気をもたらしたのは、朝倉未来のMMA復帰戦だった。

 昨年は9月のフロイド・メイウェザーJr.(米国)とのエキシビションのみだった未来のMMA戦は、昨年の大晦日に行なわれた斎藤裕戦以来。今回の対戦相手は、前RIZINフェザー級チャンピオンの牛久絢太郎だ。

 また、今大会は「ダブルメインイベント」として斎藤vs平本蓮も組まれた。この2大カードが大入り満員をもたらしたと言っていい。どちらも勝てば、朝倉未来vs平本蓮という因縁の対決が実現する可能性も出てきたが、平本は斎藤に僅差の判定負け。これで大会のムードがより厳粛なものになった気もした。実力者同士の対戦は何が起きてもおかしくない。未来が牛久に勝つという保証もない。それが格闘技だ。

 路上の喧嘩から不良格闘技イベント『THE OUTSIDER』に参戦して話題を呼び、気づけばRIZINでも看板選手に。そしてYouTuberとしても大成功を収めた。近年は『ブレイキングダウン』のプロデュースも尽力している。日本で最も有名な格闘家の1人となった未来だが、試合に肩書きは持ち込めない。試合当日、その時の実力だけがものを言う。そういう世界だからこそ、彼は試合前から何度も「格闘技が好きなんです」と言っていた。
 
 試合が始まると、未来は圧力をかけて打撃を放っていく。調子は悪くなさそうだ。ジャブは鋭く伸び、ボディショットも迫力があった。ただ、「圧倒した」とは言えなかった。戦前に公言していた2ラウンド以内のKOも実現できなかった。

 そして未来はたびたび、牛久の引き込みに捕まった。下になる不利を承知でグラウンドに持ち込み、「得意だ」という三角絞めを狙った牛久。未来はこれをディフェンスで耐えたが、この展開に時間を使った。

 牛久は未来を疲れさせる作戦だった。下からの仕掛けに対処させて体力を削ると、そのうえで、最終3ラウンドには打ち合うことも厭わない。

 ただ、スタンドでは手数、ヒットとも上。グラウンドもトップを取って細かくパウンドを打っておりマイナスはない。3ラウンド目は、予定通りに仕掛けてきた牛久のタックルで尻餅をつき、ヒザを食らったが、劣勢だったのはその場面くらいだった。

 判定結果も3-0。問題なく勝ったわけだが、満足できる内容でもなかった。
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