専門5誌オリジナル情報満載のスポーツ総合サイト

  • サッカーダイジェスト
  • WORLD SOCCER DIGEST
  • スマッシュ
  • DUNK SHOT
  • Slugger
フィギュア

「気持ちの消耗も激しかったけれど…」羽生結弦は、GPファイナルSPでの”失敗”を、全日本フィギュアで『世界新』の記録に変えた

THE DIGEST編集部

2019.12.20

堂々とした演技を東京で披露した羽生。 写真:徳原隆元

堂々とした演技を東京で披露した羽生。 写真:徳原隆元

 12月20日、東京・代々木第一体育館で開催されている全日本選手権では男子シングルのショートプログラム(SP)が行なわれた。そんななか、第23滑走で登場した羽生結弦が非公式ながら過去の自分超えを達成。2018年に自身が記録した110・53点を上回る、110・72点を叩き出している。

 SPを終えた羽生は「ホッとしました」と笑みを浮かべていた。

 今回、グランプリ(GP)ファイナルでのSP構成とはジャンプの順番を変え、1本目の4回転サルコーはそのまま、その後の4回転+3回転トゥループのコンビネーション、そしてトリプルアクセルの順番で飛ぶ構成に入れ替えた。

 「GOE(出来栄え点)を意識して」という狙いで構成に手を入れ、1週間前に自身の判断で振り付けも変更。最終的には「調子以上のものが出せた」と語った。

 この変化のきっかけとなったのは、GPファイナルでのSPの失敗だという。

 3年ぶり5度目の優勝を目指した羽生結弦は、SPを2位でスタート。フリーでは首位のネイサン・チェンとの12・95点差を縮めるべく、2年ぶりに組み込んだ4回転ルッツを含む4種5本の4回転ジャンプを着氷させた。最終結果ではチェンの点数に及ばなかったものの、フリーで見せた見事なリカバリーは、誰もがまだ鮮やかに記憶しているところだ。
 
 構成などの変更について、「あの失敗に影響された部分が大きいのか?」という質問に、羽生は「ハイ」とうなずいた。

「ある意味で、コーチが居なかったからこそ、自分の実力がそのまま出た試合だった。SPは、完璧にやってこそのプログラムだとソチ五輪のころから重々承知でやっている。ああいう風にフリーで無茶をするくらいなら、SPである程度の基盤を作っておかなければいけない」

 さらに、この全日本選手権に挑むまでの気持ちを、こう振り返った。

「 (GPファイナルを終えて)スケートに気持ちが向かないということはなかった。ただ、割と凹んでて(笑)。フリーに関しては、ある程度はやったと思っているけれど、やはり消耗も激しかったうえ、あの構成で滑り切れていない。気持ちの消耗も激しかった。

 けれど、実際にこうやって日本に来るときや、トロントでGPファイナルでいただいた応援のメッセージを見て…『本当に自分ひとりのスケートじゃないんだな』と感じて。なんとかその力をもらって、繋いでこれたと思う」

 そして、羽生は日本でSPを見事に滑り切った。「自分の中ではトリプルアクセルはミス」と言い切ったが、GOE(出来栄え点)を意識してジャンプの順番を入れ替えた新構成での手応えもあったようだ。

 22日にはフリーが行なわれる。羽生は「4回転アクセルを跳ぶわけではないので」とジョーク混じりに答えながらも、「ホッとしてから調整したい」とコメントした。 

取材・文●熊介子(THE DIGEST編集部)

RECOMMENDオススメ情報

MAGAZINE雑誌最新号