プログラム冒頭の4回転フリップ、4回転+2回転のトゥループ、そしてトリプルアクセルを着氷し、演技を終えた後は右腕を振り下ろしてガッツポーズ。「早く喜びの気持ちを表現したかった」と語るほど、充実感を漂わせていた。
「練習で失敗しても大して落ち込むことはないのに、本番の試合で失敗したらとても落ち込み、自分に失望していた。けれど、本来なら練習で100%失敗しなくなってから、失敗した事実に失望すべきで、違うなと。落ち込む自分が高望みしすぎていたんだと」
視点が変わった宇野は、この日のプログラムでも「フリップ失敗しても、引きずらないように」と、演技前から吹っ切れていたという。
そして、何があっても「笑ってやろう」と強い気持ちを漲らせ、SPに臨み、自身のシーズンベストという結果を残した。
4年間、羽生が不在だった全日本選手権を連覇してきた宇野。22日に行なわれるフリーでは、ライバルでもあり、憧れの存在を5・01点差で追う立場となる。
「(公式)練習を頑張って、本番の試合を頑張って、最後に楽しかった、うれしかったと思えたらいい」と語った宇野は、こうも語った。
「今季で一番いい状態で臨めた。ようやくいつもの自分に戻れた」
滑る喜びに満たされた宇野のフリーの演技に、期待は高まる。
取材・文●熊介子(THE DIGEST編集部)