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【名馬列伝】「短距離王国」で異次元の強さを世界に証明したロードカナロア。陣営の英断が一流種牡馬への”希少価値”を築く

三好達彦

2024.01.25

スプリント路線で驚異的な成績を残したロードカナロア。世界でもその強さを証明した。写真:産経新聞社

 通算成績は19戦13勝、2着5回、3着1回と、すべて馬券圏内をキープ。そのうち重賞が9勝で、GⅠレースに限っても6勝。恐ろしいほどの強さを見せたのが、大種牡馬キングカメハメハ直仔のロードカナロア(母レディブラッサム、母の父Storm Cat)である。

 加えて言えば、2012・13年にはJRA賞最優秀短距離馬に選出。特に13年は年度代表馬にも輝いている。そして18年には顕彰馬に選定された超一流馬である。

 それまで日本を代表する短距離馬といえば、1993・94年のスプリンターズステークス(GⅠ)を連覇したサクラバクシンオーの名が挙げられていたが、そうした見方を根底から覆すような破格の能力を見せつけたのもロードカナロアだった。

 2008年3月11日に北海道にある新ひだか町のケイアイファームで生まれたロードカナロアは、調教を積まれたのちに、数々の有力スプリンターを送り出していた栗東トレーニング・センターの安田隆行厩舎へ入厩。デビュー前、調教に乗った調教助手の安田翔伍(現・調教師)は、「大きなところ(大レース)を勝てなければまずい」と感じたほど、飛びぬけた乗り味の良さだったと伝えられている。
 
 デビューは2歳12月、小倉の芝1200m(新馬戦)だった。スピードの違いで先頭に立つと、そのまま後続を引き離し、2着に6馬身(1秒0)の差を付けて初戦を勝利で飾る。続く2戦、3戦目は僅差の2着で敗れたが、11年4月のドラセナ賞(500万下、小倉・芝1200m)を3馬身半差で逃げ切り勝ちを収めると、ここから怒涛の快進撃が始まった。

 5月の葵ステークス(3歳オープン、京都・芝1200m)を2番手からの抜け出しで快勝すると、夏の休養をはさんで出走した11月の京洛ステークス(オープン、京都・芝1200m)は中団からの差し切りで勝利。初の重賞挑戦となった京阪杯(GⅢ、京都・芝1200m)では単勝オッズ1.6倍の1番人気に推されての出走となったが、先団から抜け出して快勝。ファンの圧倒的な支持に応えて3歳シーズンを4勝、2着2回で終えた。

 4歳初戦はシルクロードステークス(GⅢ、京都・芝1200m)で、ここを2着に2馬身半差で制すと、いよいよGⅠの大舞台に目標を定めたロードカナロアは3月の高松宮記念(中京・芝1200m)へと駒を進めた。レース当日は単勝オッズ2.4倍の1番人気に推され、先団の4番手を進んで直線へ向いたが、同厩舎のカレンチャンを捉え切れず3着に敗れ、連勝は「5」でストップ。厳しいGⅠの洗礼を受けた。
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初のGⅠ制覇は驚異のコースレコード