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【名馬列伝】「スピードの絶対値が他の馬と違う」小島太が舌を巻いた国内初の“スプリント王者”サクラバクシンオー。日本競馬屈指といえる快足馬の軌跡

THE DIGEST編集部

2025.03.02

小島太を背にスプリンターズSを連覇したサクラバクシンオー。写真:産経新聞社

 日本の史上最強スプリンターは?と問われたら、おそらく多くの人が「ロードカナロア」と答えるだろう。スプリンターズステークス(2回)、香港スプリント(2回)、高松宮記念という1200m戦での強さはもちろん、キャリア終盤ではマイルの安田記念まで制し、GⅠレース6勝を挙げた実績を見ても、その評価は揺るがないものである。
【動画】サクラバクシンオーが圧巻の強さをみせた伝説の6ハロン

 しかし、"もっとも思い入れがある強豪スプリンターは?"と少し問いを変えれば、そこに上がってくる名前は違ってくるはずだ。

 40年以上競馬を観続けている筆者が後者の問いを投げられたら、1990年代の前半、スプリント界を制圧したサクラバクシンオーの名を何の迷いもなく挙げる。ベテランファンの多くに、この意見に賛同してもらえるだろう。

 サクラバクシンオーが勝ったGⅠは、1993年と94年のスプリンターズステークス、2つのみである。しかしそのプロフィールを探ると、近現代日本競馬の歴史的結晶ともいえる血脈によって生み出された快足馬であることが分かる。それが思い入れというエモーションを激しく刺激するのだ。
 
 1963年に英国で生まれ、1967年に日本軽種馬協会によって輸入されたテスコボーイは日本を代表する種牡馬の1頭である。競走生活では、繰り上がり優勝となったクイーンアンステークスぐらいしかないが、父に名馬プリンスリーギフト(Princely Gift)を持つ血統が買われ、日本で種牡馬入りすると大成功。74年と1978~81年の計5度もリーディングサイアーに輝き、おびただしい数の重賞勝ち馬を送り出した。

 旧八大競走を制した産駒を挙げると、ランドプリンス(皐月賞)、キタノカチドキ(皐月賞、菊花賞)、テスコガビー(桜花賞、オークス)、トウショウボーイ(皐月賞、有馬記念)、ホクトボーイ(天皇賞・秋)、インターグシケン(菊花賞)、オヤマテスコ(桜花賞)、ホースメンテスコ(桜花賞)、サクラユタカオー(天皇賞・秋)と、9頭にものぼる。

 その他にも、ハギノカムイオー(宝塚記念)、アグネステスコ(エリザベス女王杯)などの人気を集めた著名馬もおり、安い種付料で優秀な産駒をたくさん出して牧場の経営に貢献することから「お助けボーイ」とのニックネームを得るほどだった。
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父サクラユタカオー、母サクラハゴロモ