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フィギュア

日本男子フィギュアスケート黄金時代を迎える中、羽生結弦がさらなる高みを目指す理由

辛仁夏

2020.02.05

12月のメダリスト・オン・アイスで使った『SEIMEI』を四大陸選手権のフリーに選んだ羽生。写真:山崎賢人(THE DIGEST写真部)

12月のメダリスト・オン・アイスで使った『SEIMEI』を四大陸選手権のフリーに選んだ羽生。写真:山崎賢人(THE DIGEST写真部)

 今季は日本男子フィギュアスケート界にとって、歴史と記憶に残るシーズンになっていると言っても過言ではないだろう。昨季現役復帰した2010年バンクーバー五輪で日本男子初となる銅メダルを獲得した高橋大輔が今季を最後に男子シングルから卒業し、来季以降はアイスダンスに転向するという節目を迎えた。その高橋を追いかけ、追い越した2014年ソチ五輪と2018年平昌五輪の大会連覇を果たした五輪王者の羽生結弦が、誰も成功させたことのない4回転アクセルへの挑戦を目指しながら高難易度のプログラムを追求して飽くなき戦いを見せている。

 ジュニア時代からその偉大な先輩である羽生の大きな背中を追いかけてきた平昌五輪銀メダリストの宇野昌磨が、シニア転向5シーズン目となる昨年の全日本選手権で4年ぶりに同大会に出場した羽生との直接対決を初めて制して大会4連覇を飾った。これまで一度も勝ったことがなかった絶対王者の羽生に、決してベストな演技でもなく、ミスの連発で自滅ぎみだった相手のおかげもあったが、ミスを最小限に抑えて滑りきった成果が初勝利という大きな結果をもたらせたことは特筆に値する出来事だったと言えるだろう。

 そして、この全日本選手権では、ジュニアGPファイナル王者の佐藤駿と全日本ジュニア王者の鍵山優真という次世代のホープ2人の活躍にも注目が集まった。中でもオリンピアンの父親を持つサラブレットの鍵山は、ライバル佐藤と同じく目を見張る急成長を遂げており、初出場の全日本選手権で表彰台に上る銅メダルを獲得し、2月の四大陸選手権代表の座を射止めた。また1月にスイス・ローザンヌで開催されたユース五輪ではSP3位から逆転優勝を飾るなど、2020年北京五輪代表レースに名乗りを上げる勢いだ。
 
  高橋から始まった五輪メダリストを輩出する日本男子フィギュアスケート界はいま、まさに羽生という五輪王者を中心に世界を舞台に戦える選手たちが黄金時代を築いている。その屋台骨を支えているのは、昨年12月に25歳になったばかりの五輪王者である羽生であることに疑いの余地はなく、自他共に認める唯一無二のスタースケーターであることは言うまでもない。

 そんな羽生が念願だった五輪タイトルを2度も獲得しながら、いまだに競技者を続けているのは、彼自身がまだ限界を感じていないからだ。さらに言えば、常に高い新たな目標設定を掲げ、全ての試合で勝ちたい、勝たなければいけないという貪欲なモチベーションを持ち続けているからでもある。先頃行なわれた「テレビ朝日ビッグスポーツ大賞」の表彰式で、スポーツ放送特別賞を受賞した羽生はビデオメッセージで「今年は“限界の5歩先へ!”という誓いを立てました。つらいことや苦しいことが増えてきましたが、それでも限界に挑んで、それを超えるだけじゃなくて、さらにもっともっと先にいきたいと思っています」と語った。フィギュアスケーターとしてまだまだやりたいことや、やるべきことが残っているからこそ、羽生らしい意欲的な言葉が出てくるのだろう。
 

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