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競馬

【名馬列伝】“牝馬の国枝”を代表する史上3頭目の牝馬三冠アパパネ 抜群の勝負強さを誇る名牝の蹄跡

三好達彦

2025.08.26

 3歳となったアパパネは桜花賞トライアルのチューリップ賞(GⅢ、阪神・芝1600m)から始動。このレースはスタート後にかかったこともあって、早く先頭に立ちすぎたところをショウリュウムーンに差されて3/4馬身差の2着に敗れたが、デビュー戦から手綱を託された蛯名正義が「悲観する内容ではなく、かえって自信になった」というように、いわゆる”負けて強し”のレースであった。

 そしてアパパネは栗東トレーニング・センターに滞在したまま、本戦の桜花賞(GⅠ、阪神・芝1600m)に臨み、鮮やかなレースぶりを見せる。

 単勝オッズ2.8倍の1番人気に推されたアパパネは、やや行きたがる素振りを見せたものの、逃げたオウケンサクラを前に見ながら好位の5番手を進む。直線へ向いて前が壁になりかけたところで進路を外へと切り替えて懸命に追走すると、坂上でグイっと二度伸びしてオウケンサクラをゴール寸前で交わして先頭でゴール。走破タイム1分33秒3は、2005年にラインクラフトが記録した1分33秒5を0秒2更新する桜花賞レコードで、そのスピード能力の高さを大舞台で見事に証明してみせた。

 難なく桜花賞を制したアパパネだったが、二冠目のオークス(GⅠ、東京・芝2400m)を迎えるにあたっては、いわゆる距離の壁が取り沙汰された。例えば、1600mのチューリップ賞や桜花賞でも行きたがる素振りを見せたスピードタイプのアパパネが、一気に800m延びるオークスで距離が持つのか?というようなテーマだ。そうした不安が囁かれたためだろう。オークスでも1番人気には推されたものの、単勝オッズは桜花賞より低い3.8倍にとどまった。
 
 オークスは雨雲に覆われた暗い空のもと、稍重馬場で行なわれた。アパパネの手綱をとる蛯名も距離を意識してか、桜花賞よりも控えて中団後方の9番手で第1コーナーを回ると向正面では13番手まで位置を下げ、じっくりと脚をためながらレースを進めた。

 そして迎えた直線。逃げ込みを図るアグネスワルツを目指して馬群の外から2頭、アパパネと5番人気のサンテミリオンがまるで調教の併せ馬のように馬体を並べて差してくる。坂上でアグネスワルツを捉えた2頭は、そこからさらに激しい鍔迫り合いを展開し、見た目ではまったく判断が付かないほどにぴったりのタイミングで馬体を併せたままでゴール。アパパネの鞍上、蛯名はサンテミリオンの横山典弘に対して「おめでとう」と声をかけて、脱鞍所では2着の枠へ馬を進めたという。

 しかし、なかなか写真判定の結果は出なかった。そして約12分後、ようやく着順掲示板に上がったのは「同着」の文字だった。JRA史上初となるGⅠレースでの同着優勝となった瞬間であった。アパパネは際どく「二冠制覇」を達成した。
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