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競馬

GⅠとは思えぬ異様な展開…“究極の上がり勝負”を招いた前後半の極端ラップ【天皇賞(秋)】

三好達彦

2025.11.05

 マスカレードボールは、早世した父ドゥラメンテのラストクロップ。先行、差し、追い込みと自在性に富む脚質で、11着に敗れたホープフルステークス(GⅠ)以外は、常に勝ち負けに加わっていた。皐月賞(GⅠ)が13番手から追い込んで0秒3差の3着、日本ダービー(GⅠ)が中団から差して0秒1差の2着と春のクラシックでは惜敗で涙をのんだが、古馬との初対戦となる本レースでようやく大願が成就。混戦となったレースで、これまでの経験した多様なレーススタイルが活きて、その能力が開花した印象だ。

 殊勲のルメール騎手は「スタートがよくて、いいポジション、好きなところが取れましたが、向正面からペースが落ちて心配しました。直線で長く脚を使う馬なので、切れ味を使えるか、わかりませんでした」と、不安をともにした騎乗だったことを振り返る。

 本レースに臨むにあたって数頭の陣営からオファーがあった中から選んだ1頭がマスカレードボールだったというのだから、トップオブトップの選馬眼は鋭く馬の本質を見抜くものだと、あらためて感心することしきりである。また同時に、非常に難しい展開のなかでも、針の穴を通すように正確無比な騎乗で勝利を引き寄せる能力はやはり一級品であると再認識させられた。

 さて、いま一度1着から14着までが0秒7という小さな差のなかに収まった極めて珍しいレース内容を、いくつかのタイム比較で見てみる。

 まず全体の走破タイムの1分58秒6(良)は、イクイノックスがレコードを叩き出した一昨年の1分55秒2(良)よりも3秒4も遅い。今年の1000m通過ラップは前述の通り62秒0だったが、一昨年は57秒7を計時しており、その差は4秒3。この差異が究極の上がり勝負を招くことになる。
 
 次に見ておきたいのが、前半と後半のタイム差。一昨年が前半57秒7-後半57秒5とその差は0秒2に過ぎなかったが、今年が前半62秒0-後半56秒6と、実に5秒4も差があるという極端な後傾ラップ。ここまで差が付くと、各馬のスタミナは問われず、ひたすらに末脚の切れのみが求められる、異様なまでの上がり勝負になったのだ。

 そして、その上がり3ハロンの時計を比較してみる。一昨年はレースの上がりが34秒7で、勝ったイクイノックスは34秒2(最速の上がりはジャスティンパレスの33秒7)。方や今年はレースの上がりが32秒9で、勝ったマスカレードボールは32秒3。そして最速の上がりは4着のシランケド(牝5歳/栗東・牧浦充徳厩舎)が計時した31秒7というのだから、ただただ驚くしかない。ちなみにこの上がり時計は1986年以降の東京コースでは最速の時計だという。

「レースは生きもの」とよく言われるが、ここまで異様な展開を見せられると、今年の天皇賞(秋)をどう解釈すればいいのか…出走各馬の能力比較をするのも極めて難しい。おそらく騎乗した各ジョッキーがみな各馬の能力が近接していると判断したため動くに動けなくなったために引き起こされた事態だと推察するが、せめて第3コーナーからロングスパートで勝負を仕掛ける騎手がいてほしかったと思わずにはいられない。

文●三好達彦

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