迎えた天皇賞(春)。勢いに乗る若武者を背に、地方競馬から成り上がったことから”野武士”とも言われたイナリワンは、ついにそのポテンシャルを全開にする。
単勝オッズ9.3倍の4番人気となったイナリワン。ゆっくりとゲートを出て後方13番手からレースを進め、スタンド前で観客の歓声に反応して行きたがったが、鞍上はすぐに馬を前に置いて折り合いを付ける。そして向正面でじわじわと前との差を詰めると、第3コーナーからの坂の下りでさらに位置を上げて4番手で直線へ向く。ここでゴーサインを出されたイナリワンは豪快な末脚を繰り出してあっという間に前を捉えると、あとは独走態勢を構築。ゴールでは2着のミスターシクレノンに5馬身差を付ける圧勝を遂げていた。
これは史上6頭目となる地方出身馬の天皇賞制覇で、走破タイムの3分18秒8は従来のコースレコードを0秒4も更新していた。また手綱をとった20歳の武豊は、安田隆芳の19歳に次ぐ史上2番目の若さでの戴冠。陣営の期待に応えて一発回答を出したこの一戦が、武豊の才能の凄まじさを広める決定的な騎乗にもなった。
武豊が連続騎乗することになったイナリワンは宝塚記念に出走。ここでは皐月賞馬ヤエノムテキとともに単枠指定の対象馬となり、単勝人気はヤエノムテキに次ぎ、オッズ4.8倍の2番人気となった。ほかにも日本ダービー馬サクラチヨノオー、安田記念優勝のフレッシュボイス、バンブーメモリーなど、骨っぽいメンバーが揃っていた。
このレースでのイナリワンは前走とは打って変わって好スタートから3番手で先行し、第3コーナーからじわりとスパートを開始。最終コーナーで逃げたダイナカーペンターに並びかけると、直線に向くと早くも先頭に躍り出て一心にゴールを目指した。後ろから迫ってきたのは末脚自慢のフレッシュボイスで、早めに動いたためやや末脚が鈍ったイナリワンをじわじわと追い詰めたが、クビ差それを抑えて優勝。武豊の自在な手綱さばきで、オーナーの保手浜が移籍前に掲げた目標、天皇賞(春)と宝塚記念の二冠を手中に収め、しばしの休養へと入った。
1989年の秋シーズン。「平成三強」は相次いでターフへの復帰を果たす。オグリキャップは9月17日のオールカマー(GⅢ)に出走し、単勝オッズ1.4倍の圧倒的人気に応えて快勝。10月8日には京都大賞典(GⅡ)でスーパークリークが主戦騎手の武豊と復帰戦を勝利で飾り、毎日王冠(GⅡ)では約4か月ぶりの実戦となるイナリワンが、ひと足先に復帰を果たしたオグリキャップと早くも激突。”マル地対決”とも呼ばれた本レースは史上稀に見る激闘となったので、少し詳しく触れておきたい。
この年から手綱を託された南井克巳が乗るオグリキャップの単勝はオッズ1.4倍の1番人気。方や、新たに指名された柴田政人が騎乗するイナリワンはオッズ9.0倍の3番人気と、支持率にはかなりの開きがあった。もちろんこれにはオグリキャップのアイドル人気があったことは間違いないが、イナリワンに1800mは距離が短すぎるのではないかとの疑問もあってのこの差だった。
8頭立てという少頭数ではあったが、レースは熾烈なものとなった。オグリキャップが後ろ目の6番手に位置すると、イナリワンはそれをマークするように7番手を進む。平均ペースで進むなか、オグリキャップは徐々にポジションを押し上げながら直線へ向く。前方では先行したウインドミルとメジロアルダンが抜け出すが、そこへオグリキャップが脚を伸ばし、さらに外からイナリワンが襲い掛かる。
残り100mを切ったところで内の2頭を交わしたオグリキャップとイナリワンの激しい叩き合いとなり、ぴったりと馬体を併せたままでゴール。長い写真判定の末、ゴール線を過ぎる瞬間に首を前へと伸ばしていたオグリキャップがイナリワンをハナ差抑えて勝利を果たしていたが、詰め掛けたファンからは大きな歓声が沸き上がり、同時にトップオブトップ同士の真剣勝負を目にした喜びとでもいうべき熱気に包まれていた。
単勝オッズ9.3倍の4番人気となったイナリワン。ゆっくりとゲートを出て後方13番手からレースを進め、スタンド前で観客の歓声に反応して行きたがったが、鞍上はすぐに馬を前に置いて折り合いを付ける。そして向正面でじわじわと前との差を詰めると、第3コーナーからの坂の下りでさらに位置を上げて4番手で直線へ向く。ここでゴーサインを出されたイナリワンは豪快な末脚を繰り出してあっという間に前を捉えると、あとは独走態勢を構築。ゴールでは2着のミスターシクレノンに5馬身差を付ける圧勝を遂げていた。
これは史上6頭目となる地方出身馬の天皇賞制覇で、走破タイムの3分18秒8は従来のコースレコードを0秒4も更新していた。また手綱をとった20歳の武豊は、安田隆芳の19歳に次ぐ史上2番目の若さでの戴冠。陣営の期待に応えて一発回答を出したこの一戦が、武豊の才能の凄まじさを広める決定的な騎乗にもなった。
武豊が連続騎乗することになったイナリワンは宝塚記念に出走。ここでは皐月賞馬ヤエノムテキとともに単枠指定の対象馬となり、単勝人気はヤエノムテキに次ぎ、オッズ4.8倍の2番人気となった。ほかにも日本ダービー馬サクラチヨノオー、安田記念優勝のフレッシュボイス、バンブーメモリーなど、骨っぽいメンバーが揃っていた。
このレースでのイナリワンは前走とは打って変わって好スタートから3番手で先行し、第3コーナーからじわりとスパートを開始。最終コーナーで逃げたダイナカーペンターに並びかけると、直線に向くと早くも先頭に躍り出て一心にゴールを目指した。後ろから迫ってきたのは末脚自慢のフレッシュボイスで、早めに動いたためやや末脚が鈍ったイナリワンをじわじわと追い詰めたが、クビ差それを抑えて優勝。武豊の自在な手綱さばきで、オーナーの保手浜が移籍前に掲げた目標、天皇賞(春)と宝塚記念の二冠を手中に収め、しばしの休養へと入った。
1989年の秋シーズン。「平成三強」は相次いでターフへの復帰を果たす。オグリキャップは9月17日のオールカマー(GⅢ)に出走し、単勝オッズ1.4倍の圧倒的人気に応えて快勝。10月8日には京都大賞典(GⅡ)でスーパークリークが主戦騎手の武豊と復帰戦を勝利で飾り、毎日王冠(GⅡ)では約4か月ぶりの実戦となるイナリワンが、ひと足先に復帰を果たしたオグリキャップと早くも激突。”マル地対決”とも呼ばれた本レースは史上稀に見る激闘となったので、少し詳しく触れておきたい。
この年から手綱を託された南井克巳が乗るオグリキャップの単勝はオッズ1.4倍の1番人気。方や、新たに指名された柴田政人が騎乗するイナリワンはオッズ9.0倍の3番人気と、支持率にはかなりの開きがあった。もちろんこれにはオグリキャップのアイドル人気があったことは間違いないが、イナリワンに1800mは距離が短すぎるのではないかとの疑問もあってのこの差だった。
8頭立てという少頭数ではあったが、レースは熾烈なものとなった。オグリキャップが後ろ目の6番手に位置すると、イナリワンはそれをマークするように7番手を進む。平均ペースで進むなか、オグリキャップは徐々にポジションを押し上げながら直線へ向く。前方では先行したウインドミルとメジロアルダンが抜け出すが、そこへオグリキャップが脚を伸ばし、さらに外からイナリワンが襲い掛かる。
残り100mを切ったところで内の2頭を交わしたオグリキャップとイナリワンの激しい叩き合いとなり、ぴったりと馬体を併せたままでゴール。長い写真判定の末、ゴール線を過ぎる瞬間に首を前へと伸ばしていたオグリキャップがイナリワンをハナ差抑えて勝利を果たしていたが、詰め掛けたファンからは大きな歓声が沸き上がり、同時にトップオブトップ同士の真剣勝負を目にした喜びとでもいうべき熱気に包まれていた。




