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「メダル以外は価値がない」新谷仁美が“頼れるパートナー”と共に東京五輪へ!32歳の進化を見せられるか?

寺田辰朗

2021.01.21

 ドーハ後は横田コーチが、負荷が大きく週に2~3回行なうポイント練習のメニューを考え、本格的なウェイトトレーニングも取り入れた。新谷にとっては長めといえる距離に取り組み、昨年1月にはハーフマラソン(21.0975km)の日本記録を更新。トラックではつねに力を入れて走っていた新谷が、力を抜いてもスピードが出せることを理解できた。

 さらに1500mでは、7月に4分20秒14と15年ぶりに自己記録を更新。5000mでも2月に15分07秒02と8年ぶりの自己新をマークし、練習中のスピードを楽に出せるようになった。9月の全日本実業団陸上5000mでは14分55秒83の日本歴代2位と記録を短縮。国内では初めて、レース前半を人の後ろを走り、2400mで前に出て自分のペースに持ち込んだ。最後の1周を66秒8と、苦手だったラストスパートのタイムも上がってきた。

 20年シーズンの新谷は、人の後ろで力をセーブして走ることと、レース終盤のスピードアップ、そして世界トップレベルのタイムと、東京五輪で戦うために必要なパーツを手に入れた。

 そして何よりの成果は、人を信頼することが走りにつながる、という精神状態に新谷がなれたことだ。試合前には常に緊張して、精神的にも自分を追い込んでいた新谷が、日本選手権前は「失敗したらメニューを考えている横田コーチの責任です」と、冗談交じりに話すまでになった。
 
 1つ誤解のないよう記しておくと、ポイント練習以外のメニューは新谷が考えている。新谷の一番の特徴は中間走の速いペースを維持することだが、1日30kmを走ることを自身に課し、スタミナ養成の主要部分を自身の責任で行なっている。

 13年までとの違いを問われた新谷は「強い味方がいること」と答えた。練習メニューなど全体的な統括を横田コーチに任せ、ウェイトトレーニングはトレーナー、栄養指導は管理栄養士と、専門分野別にスタッフを付けて取り組む。そうした分業制自体は珍しくないが、彼らへの信頼が新谷の理解を深めている。

 結果にこだわる新谷が、結果を出すためのプロセスに自信を持ち始めた。それが、東京五輪の新谷に期待できる一番の理由である。

取材・文●寺田辰朗
 

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